#2  嫌いになって

 永野に告白されてとても気まずかった。前の席だと言うことが厄介。私はできるだけ目を合わせまいと本を読んでいた。しかし彼は覗き込んできて合ってしまう。

「アヤ?」

 わざわざあだ名でそう言う彼は周りに見せつけるようだった。私はほとんど無視していた。何か質問されたときだけ適当に答えた。私は友達が登校してきたのを見て駆けつけた。少しでも早く彼から離れるために。

 

 現在私の救世主、立花心珠たちばな ここみは私の話を聞いてくれた。

「ブッ!」

 吹き出して笑った。私は少しムッとしながら心珠を見ていた。

「告白されたの。あの、不良君に?アハハ。」

 笑い事ではないのですが?

「どうしよう、超気まずい。」

 心珠は可愛らしく笑いながら一時限目の準備をしていた。

「なんで、私なんだろう。」

 私がそう呟くと心珠は永野を見た。そして憐れむ様に見つめて言った。

「まぁ、永野君に綾香以上に仲良くなれる友達なんていないからね。」

 私はその言葉を聞いて永野を見た。寂しそうに冷たく外の景色を眺めている。彼は、やはり少し悲しそうに見える。

 私、もしかして酷いことしちゃったかな…。

 自分の行動に罪悪感がいくつも生まれ始めた。最終的に謝ろうかとも考えた。するとバチッと目が彼と合った。すると愛おしそうに彼は笑った。珍しく口角を上げて優しく笑っていた。しかし、私はなぜか腹が立った。煽られているようなそんな気がしてやまなかった。

「やっぱあいつ嫌い!」

 私は視線をずらしてそう言った。心珠は「まあまあま。」と私をあやしていた。私はもう彼のことが好きではない。




 一時限目が終わった。二限目の準備をしていると永野が近づいてきた。

「アヤ、好きな食べ物は?」

 そう聞いてくる彼に私は無視していた。

「やっぱりオムライス?」

 わかってるなら聞いてこないでよ。そう思いながら無視していた。すると彼は舌打ちをした。そして私の肩を掴んで顔を無理矢理合わせた。私はやはり不良の迫力に圧倒されじっと永野を見つめてしまう。永野は笑った。

「やっと見た。」

 私は腹が立つのと恥ずかしいのを感じた。地獄のような絶望感と苛立ち。私はすぐ顔をそらした。すると永野は私の腕を引いた。私はその力に倒れそうになったが永野に受け止められてしまった。そして耳元で囁かれた。

「絶対お前に俺を好きにさせてやるから。」

 私は彼に言った。

「なら嫌いにさせてやる。」

 永野は余裕そうに笑った。

「やってみろよ。」

 私は永野を睨んだ。きつくきつく睨んだ。永野は私の手を離すと手を軽く振っていなくなってしまった。そして一人で考えていた。


 彼は、私とは違ってすぐに諦めないんだなって。




 彼はサボりだったらしい。永野数学苦手だったかな?なんて思いながら数学の授業を受けていた。本当に彼は問題児。私は溜め息をついた。



 サボりから帰ってきた問題児永野は二時限目が終わると戻ってきた。そしてまたも私にくっついた。

「今度一緒に。買い物行こうぜ!」

「映画館も行きたいな!」

「プラネタリウムもいいよな〜!」

「水族館もあんま行かないから行きたいな!」

 と独り言。犬のような無邪気さはないがいつもにましてかまってちゃん。こんなんで、本当に私を惚れさせる気なの?

 そう呆れてしまう。私は彼を睨んだ。私は彼に嫌われたい。だったらされたら嫌なことをすればいいわけだ。

「さっきからうるさいんだけ煩いんだけど。耳障りだから黙ってくれない?」

 なかなか酷いことを言った。罪悪感が体を蝕む。私は恐る恐る永野を顔を見た。彼は冷たい瞳で私を映した。

「随分とまぁ、生意気だな?」

 急な俺様感に私は引いた。顔は怖いし何されるかわからない。この対応、失敗だな…。

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