第14話 大波

コンコン。硬い木の材質が跳ね返ってくるようだった。

「……」

 返事がない。

 コンコンコン! 少し強めに叩く。手の甲が少し赤くなった。

「留守ですかね?」

 コンコンコンコンッ!

「うるさいなあ! 放っておいてよ!」

 扉の向こうから大波の声が聞こえた。

「大波さん! 昨日のことについて確認したいのですけど……」

「うるさい! うるさい! ぼくは先生が……先生が……」

「知っていたのですか?」

「横山から聞いたよ! それに犯人も。朱音とかいう三流魔術師に殺されたんだろ! くそ!」

「まだ。そう決まったわけじゃ……」

「うるさいな! 横山たちが見たんだから絶対に犯人だ! 証拠だって揃ってるんだ! じゃあね」

 それきり扉の向こうでは嗚咽の声が木霊して聞こえた。

「これ以上はダメそうですわね。また後で聞きましょ?」

「……そうですね」

 俺は大波への同情と、響子さんを馬鹿にされたことへの怒りを抱え、次の聞き込みへむかった。

 絶対に犯人を許さない。それを改めて誓いながら……。

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