第13話 チャンドラー

次にチャンドラーさんの部屋を尋ねた。彼は椅子に座っており、顎に手をやった。

「昨日の十一時? なぜそんなことを聞く? 事件は解決したろうに」

「確認ですわ。いいから答えてくださいまし」

 ポリポリとチャンドラーさんは金髪をかいた。

「面倒だなあ。十一時なら、確かに私はウースター卿と海斗くんと一緒にいたよ。ちょうど十一時を告げる鐘が鳴ったしね」

 十一時の鐘ならば俺たちも聞いている。それなら間違いない。

「昨日は何の話をしていたのですか?」

「ああ、昨日はウースター卿が突然、これからの魔術協会についてお話したいと言うので、案内された談話室で口論していただけだ。まったく! アイツは嫌味なことしか言わない!」

 その会話を思い出したのか、チャンドラーの手が振るえた。

「……そういえば、チャンドラーはここに来るのは初めてでしたわね」

「ああ、そうだ。全く最悪だよ。早く本国に帰らないといけないのに……」

「大波さんがいらっしゃったのはいつ頃ですか?」

 神坂さんの質問に、首を横に振る。

「さあ。時計を無くしてしまったのでなんとも。確か鐘がなる前だから10時30分くらいかな? 『ボクも社会について勉強したい』だとかなんとか。我々の口論を黙って見てたよ」

「ありがとうございますわすわ。それでは」

 そう言うと、神坂さんは立ち上がった。俺も一緒にお辞儀すると部屋を出た。

 前を歩く神坂さんにお礼を言う。

「ありがとうございます。僕、あまり面識なかったので。それに……ああいう人苦手なもんで」

「まあ、わかりますわ。一応、仕事では優秀なんですけど、短気で心配性ですから」

「チャンドラーさんはどんな人、でしたっけ?」

「イギリス協会の外国官ですわ。でもつい先日まではわたくしと同じ監視官で、たまにおこなわれる監視官の合同集会で会うことが多くて……腐れ縁ですわ」

「そ、そうですか……」

 なんだか酷く嫌われているように見える。

「さあ、次いましょう」

「そうですね。次は……大波さん、ですかね?」


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