第8話 静寂な夜

 その後、「私、ステージあるから!」と言われ、高田さんと別れ。その数分後に高田さんのマジックショーがおこなわれた。高田さんのマジックはとても迫力があり、会場は大盛り上がり。なかでも、男性になったり、老人に変装するのが面白かった。響子さんに聞くと、それは魔術ではなく、本当の変装だそうだ。

「ところでマジックと魔術は何が違うのですか?」

 そんな質問を響子さんにしてみた。

「そうだね……。マジックは対価なしに魔法を行使し、魔術は等価交換、といったところかな」

「対価なし……? 魔法? そういえば、魔法と魔術は何が違うのですか?」

「我々人間は少なからず、大地から力を借りている。それを最大限に引き出し、扱える者が魔術師。逆に代償もなしに力を振るえる者、それを魔法使いと呼ばれる。……だから、マジックはある意味、魔法に近いかもね。もっとも、それは努力を代償としているとも言えるけど。はあっー」

 そんな話をしていると、人が段々少なくなってきた。

「そういえば、ウースター卿とはなにを話したのですか?」

「ただの自慢話。眠くなったちゃった……」

「そうですか……」

 よかった。何か変なことではなかったようだ。

「今日確かここに宿泊ですよね?」

「そうだよ~」

「何人ぐらい泊まるのですか?」

「うーん、確か六、七人だったかな……」

 高田さんは泊まるのだろうか。できればさっきのショーの感想を言いたい。

「……苦しい」

 でろんでろんになった響子さんは体調が悪そうだ。だから、あれほどお酒を飲みすぎるなと忠告したのに……。

「そろそろ行きますか?」

「そうね……」

 そう言うと響子さんはフラフラと立ち上がる。

「自分でいけますか?」

「大丈夫……」

 フラフラする響子さんを支え、途中まで送る。分かれ道で別れ、横山さんに案内された部屋に入った。

「はーあ!」

 俺はばたりとベットに倒れ込んだ。色々あって疲れた……。

 特に、過去のことを思い出したのが……。考えるのはやめにしよう。

 ベットからはいい香りがして、眠気を誘う。

「さて、どうしようか」

 時計を確認すると、時計の針はちょうど九時を指していた。

 疲れたからこのまま一眠りしようかな。

 俺は服を着たまま、眠りについた……。

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