第3話 鏡の中

「それで、その格好ということは、神坂さんもパーティーに?」

「ええ。はい」

 スルッと胸元から招待状を出す。なんてところに隠してるんだよ!? 

「それで、せっかくなら響子ちゃん達と行きたいなと思いまして……」

「ドレスを着せてもらったの。ああ、胸キツイ」

 響子さんは胸元を頑張って引っ張る。そういうの他の男の前でやっちゃだめだからね!

「それにしても、いや似合いますよ。だけど、目立ちません? これ」

 俺は響子さんの真っ赤なドレスを指さす。普段、パーティーなんかには行かないのでわからないが、たいていは目立たない色合いを選ぶのでは? 今の響子さんは、下手したら主催者より目立つかもしれない。

「まあ、そうですわね……別のにします?」

「えー、もう一回着替えるのも面倒くさいからこれでいい」

「そうですか……。で、どうやってその鏡蘭館に行くんですか?」

 インターネットで調べたが、珈琲屋さんと、ふるさと納税しかヒットしなかったよ。当たり前か。

「うん? すぐ着くよ?」

「近いんですか?」

「すぐそこ」

「へー、そんなとこあったんですね」

「? 毎日見てるじゃん?」

「?」

「?」

 全く響子さんと話が噛み合わない。それを察してか、神坂さんが助け舟を出してくれる。

「響子ちゃん、色々省き過ぎますわ。ちゃんと説明なさらないと」

「ああ! 奏多くんには言ってなかったわね。こっちに来て」

 そう言った響子さんの後ろを歩いて行くと、玄関にある大鏡の前に来た。

「ここが、どうしたんですか?」

「招待状貸して」

 俺は言われるまま、響子さんに招待状を渡すとそれを鏡の前で十字に切った。

 すると、十字に切ったところが紙のようにペラペラめくれ、円形の穴が開く。その穴を覗いてみると、奥には夜のように暗い森と洋館がそびえ立っていた。

「ま、まさか鏡蘭館は……」

 俺は振り返り、響子さんを見る。

「そう、鏡の中にあるの」

 響子さんはそう、高らかに言った。

「さあ、飛び込みますわよ!」

「え、あっ! ちょっと!」

 突然、神坂さんに手を握られ鏡に飛び込むような姿勢になる。まずい! このままじゃ、ぶつかる……! 俺は思わず目を閉じるがいつまでも痛みがやってこない。

 俺は、恐る恐る目を開けると、そこには……。

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