第8話 事件の後に

 事件が終わり、事務所に戻る頃には深夜になっていた。

 途中で眠った響子さんをソファーへ投げ飛ばすと、俺は上の寝室へ足を運んだ。

 報酬は十文字さんからもらうことになったが、響子さんが伝説的絵画を床へ叩き付けた賠償として、結果十万円になってしまった。

「はーぁ。疲れた……」 俺はベッドに倒れ込む。結局、竹内は何者だったのかわからない。派遣会社が何を指しているのも。

 そして、賢者の石を手放した初代十文字さんの思い。

 賢者の石が危ないというのはどういう意味なのだろうか?

 俺だったら不老不死を簡単に手放す気にはならないけど……まあ、三百年も生きていたら何か変わるのかもしれない。

 ピロリーンと携帯が鳴る。

 俺はスマホを開き、通知を見る。

 妹からのメッセージだった。

「『お兄ちゃんは大晦日はどうするの?』か……まあ、久しぶりに帰ろうかな……」

『帰る』とメッセージを打つと、スマホの電源を落とした。

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