第12話 青い月

「へーなるほどね」

 ある路地裏に二人の男女がいた。

 一人は水色の服を着た、清楚な女性。

 そして、対照的に服に穴が空き、血だらけになっている顔の青い猿顔の男だった。

「それで、これからどうする? 子供ならまたいくらでもさらってやるよ! だからよぉ、傷、治してくれよ」

 しかし、女性は困ったように、口に指をあてる。

「うんー。残念ながら子供は必要なくなったの。実験も失敗だったわ」

「は?」

 男、田中次郎の顔は青くなる。

「じゃあ、なんだ。俺たちは……」

「そう。ただの実験道具。でも、さすがピエールの駒ね。予想より役に立ったわ。あ・り・が・と」

「ふざけんな! 俺はアンタが協力して欲しいて言われたから協力したんだぞ! それを捨てるなんて……俺たちの夢はどうなるんだよ!!」

 田中は腹を押さえ、苦しそうにそう叫ぶ。だが女性は不敵に笑う。

「そう言えばそんなこと言ったかもしれないわ。安心して。最後まで協力してもらうから」

「ど、どういう意味だ?」

 女性は、ブロック塀に寄りかかる。

「もちろん意味通り。し・ぬ・ま・で」

「!?」

 ガッー! 男の断末魔が上がるが誰もその声を聞く者はいない。

「私、前々から思っていたんだけど、あなたとは意見が合わないと思っていたのよね」

 すでに、男だった水たまりに話しかける女性。反射した月がやけに眩しかった。

「だから『同じ』にしてあげる。けど、可哀そうだから少しだけ残してあげる」

 すると、水たまりが震え、中から何かが出てくる。それはヒト型になり、やがてある姿になる。

「それにしても、元気そうでよかった。いつか殺し合おうね、きょ・う・こ!」

 女性はそう言うと、月に向かって投げキッスをした。

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