第13話 希望
「セイ」
父も私に笑顔を向けた。ずっと見たかったパパの満面の笑み。幸せそうな表情。もう二度と見れないと思っていた。
「パパぁ……」
私は嬉しくて泣いた。
父はそんな私を抱きしめた。その体に体温は無かった。冷たくも温かくもない。でも心の温かさは伝わってきた。私の心も温かくなった気がした。
「遺して逝ったことを申し訳なく思う。でも忘れないで欲しい。パパはいつもセイと一緒にいる。これまでも、これからも、ずっと。心は愛する人の傍にある」
父の体が輝き始める。私はその光を抱きしめた。強く、優しく。
「サヨナラだけど、サヨナラじゃない。僕は永遠にセイの心で生き続ける」
私はパパから一歩離れた。
「パパ、ありがとう。ずっと寂しかった。でも……忘れないで。私はもう独りじゃない。パパだけじゃなく、私にはママもカナデもいる。友達も、親戚も。そして可愛い天使も、神様も」
パパは声を出して笑った。私も笑った。天使も笑っている。
パパはゆっくりと目を閉じた。一瞬だけ泣いてるように見えたけど、多分あれは気の所為。
パパはゆっくりと天に昇っていき、ぱあっと弾けて消えていった。
私はそれを見届けた。光の粒がひとつも残らず消えるまで天を仰いでいた。
「セイ」
天使は私を呼んだ。
「馬鹿なあんたを愛してる」
天使はそう言って私に飛びついてきた。私は笑って抱きとめた。
「ありがとう」
「うん、またね」
天使の体も溶けていく。天使とはまた近々会える。そんな気がした。
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