第11話 再会
「パパ……!会いたかった。どうしても」
私たちは強く抱擁した。互いの存在を確かめるみたいに。
「ああ、知っていたよ。遠くでずっと見ていたから」
「でもどうして会えたの?」
「それはセイが一番よく知っているだろう?」
「私が……?」
私はパパから体を離して天使を見た。天使は怪訝そうな表情で私を見ていた。
「セイ……?何か知っているの?」
天使は私に尋ねた。
ーーそうか、そうだったか。私はあることを思い出した。
「……天使は、私がどうして神様に願いを叶えてもらったのか、知ってる?」
「いいえ、聞かされてないわ」
私は天使に背を向けた。そしてゆっくりと口を開いた。
「ある日、幼い私は泣きながら夜に願ったの。もうどうなってもいいからパパに会わせて欲しい、と。そうしたら目の前に悪魔が現れた。大きくて真っ黒な恐ろしい悪魔だった。悪魔は言った。俺に生命の雫を分け与えたら、その願いを叶えてやる、と」
「生命の雫……?」
「幼くて生命力に溢れた私の血よ」
私が左腕の袖をめくると天使はハッと息を飲んだ。
「私は毎日手首を切ってしたたる血を悪魔に飲ませた」
「そんな……」
「でもさすがの悪魔にも私の願いは叶えられなかった。死者に会うには私も死ななくてはならない。でも私がパパに会うために死んだら悪魔は血を得られなくなる」
私は大きく息を吐いた。
「そして悪魔は私の血を飲みたいだけ飲んで去っていった。私の願いを叶えることもなく。血を失って死にかけた私の元に神様が現れた。神様は愚かで純粋だった私を憐れみ、こう言った。亡くしてなおも父を思い続ける愛しき我が娘よ、生命よ。悪魔に血を与えてしまったことを悔い、これからは賢く生きていくのなら、その願いを私が叶えよう、と」
私は自分の遠い日の夢のような出来事を一つ一つ思い出しながら言った。
そう、そうだった。私は神様に会ったんだ。
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