第9話 ①一緒に

今日はどんな記憶だろう。

1歩、また1歩と天使と一緒に真っ白な世界を進んでいく。

やがて目の前に大きな壁が立ちはだかった。

「なんだろう、これ」

「進めないね」

私はなんとなく手を伸ばしてその扉に触れた。

すると壁の中心が一直線に割れ、両開きの扉へと姿を変えた。

「早く先に進もう!」

天使はわくわくしていた。楽しそうだった。とても。そうか、天使は知らないんだ。私の記憶も、これから見る景色も。

「ごめん」

私は小さい声で天使に謝って、少しだけ開いているその重たい扉を押した。

中から濃霧が溢れるように流れ出て、私たちを避けて通り抜けいく。

扉の向こうは霧で見えない。天使ははしゃぎながら扉の向こうへ進んでいく。

「ほら、おいでよ!あんたの望んだもの、私も早く見たいわ」

天使はキョロキョロしながら霧の切れ目を探している。

「……今行く」

私は重たい足を一歩踏み出し、天使に続いて中へと進んだ。

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