第8話 創造


あの日、突然やって来て私の願いを聞くなり急に姿を消した天使。それ以来姿を表さなかったが、まさか二度目の再会が私が嘔吐してる時だなんて最悪だ。

私は落ち着かせるために軽く水を飲み、ふわふわのタオルで口元を拭いた。

「で、今度はなんの用?」

「願い、叶ったでしょう?どう?感想は」

「最高だね。自分の健康を犠牲に、なんて説明は受けてなかったけど」

天使は悪魔のように笑った。私は眉間にシワを寄せて大きく呼吸した。

あの日、私は天使に二番目の願いを天使に聞いてもらった。一番目の願いは絶対に叶わないし、叶っても今は困るだけだから。

私が願ったのは「過去を見ること」。

それが叶ってあの真っ白な世界が創られた。

白い世界は私の記憶だ。浮遊するぬいぐるみや雑貨は全て小さな頃に私の家にあった愛着のあるもの。

私が望んで作り上げてもらった過去の世界に、眠ると行ける。

「ねえ、折角だから私もその世界に連れてってよ」

「え?一緒に行けたりするの?これ」

「神様に頼んでおいたの!手を繋いで眠ると同じ場所に行けるらしいわ」

神様、なんでもありだな……。

「さあ、早く」

私はベッドに寝転び、その横に天使が横になる。

天使の指が私の指に絡まり、離れないように手を繋ぐ。シングルベッドに誰かと2人で横になるなんて、久しぶりな気がする。小さい頃はお母さんとよく一緒に寝てたな。妹が生まれてからはシングルベッドをふたつ繋げて3人で眠った。妹は、今どこで何をしているんだろう。そうだ、天使の匂いはお母さんの匂いに似ている。懐かしい、あのいい匂い。

私はいつの間にか眠っていた。

眠ったと気付いたのはやっぱり白い世界に来れたから。

いつもと違うのは隣に天使がいること。

真っ白な世界に天使が映える。

天使は周りを見回して、すごい、と呟いた。

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