第5話 来訪者
夢から覚め、目を開く。今日も昨日と一緒で私は泣いていた。明日もこうして目を覚ます。
いいんだ、涙くらいくれてやるよ。
白い世界が無いか、当たりを見回してみる。そうだ、この部屋は私の部屋だ。古いランドセルが目を引くが、私は苦しくなって見るのをやめた。
白い世界は……ここには無かった。つまりここは現実の世界。この確認も毎日のルーティンだ。
私は大きく深呼吸をした。部屋に散らかっている様々なものを見て見ぬふりしてトイレへと向かった。
体をかがめて便座の蓋を上げて、そのままの前傾姿勢で、胃の中身を吐いた。全部吐いた。
吐いて吐いて、空っぽになったあとで今度は赤の塊を吐く。
「はあ……はあ……ッ、あ」
私は落ち着くまで一人で泣いていた。もういいのよ、涙は。どれだけ流したって私の望みは、白い世界という望み以外はもう絶対に叶わないのだから。
「あらー?あんた大丈夫ー?」
ねっとりとした聞き覚えのある声がして、虚ろな目でどことなく見つめていた視線を上に向ける。そこには真っ白の天使の格好をした小さな人が立っていた。左手を腰に置き、右手の人差し指を私に向け、かわいくウインクするこの人は…………。
「……ごめん……誰だっけ」
天使はわざとらしく肩を落として拗ねた。
「あんたぁ、私への恩を忘れたのぉ??」
甘ったるい言い方が特徴的なこの天使と会うのはこれで二度目だった。
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