#6
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「おはよう」
その言葉と共に朝は始まった、目の前には結花が僕のことを見つめていた
「寝顔見ちゃった!」
何でこんな事になったのか正直あまり覚えていない
「和希って意外と可愛い顔してるよね」
そう言ってはにかむ結花をどんな顔して見れば良いのかわからなかった。
(学校...!?)
「今何時だ?!」
"10時21分"
まだ少し霞んだ目で時計を見た、何度目を擦ってみても時計の針は"10時21分"のままだった。
「やばい!遅刻だ!!結花も急げ!」
「良いじゃん一日くらい行かなくたってなんとかなるよ」
「そんなことよりさ、今日はどこ行く?」
「この前は海に行ったから今日は山かな?」
「流石に学校サボって遊びに行くのはまずいだろ..」
「体調悪いとか言っとけば大丈夫だよ」
「べつにいっか」
「じゃあ、山行くか!」
上手いこと結花にのせられて山に行く事になった。
「じゃあ準備しよっか」
それと同時に二人は身支度を始める。
ガチャ
身支度を終え、玄関のドアを閉めた
二人は並んで歩いて駅に向かう。
「えーっと、まだ20分くらい待つね」
駅に着いたところでスマホを眺めながら結花が言う
「取り敢えずホームのベンチに座って待つか」
「そうだね」
ホームのベンチに座ってしばしの休憩をしていると隣から結花の声が喋りかけてきた
「ねぇ和希、喉乾いた」
「あそこの自販機で買えば」
「嫌だ、買って」
「何で僕が..?」
「良いじゃんそれくらい和希バイトしてるでしょ」
「わかったよ..」
少し呆れつつも買ってあげることにした。
「ありがとう!ぷはぁーおいしい!」
満面の笑みで飲み物を飲む結花を見てなんだか自分も笑みが溢れてきた。
「あっ!電車来た!行こ!」
電車に揺られること約2時間
「ついたー!」
改札を出た所で大きく腕を上げて伸びをした
「途中までリフトで行けるみたいだけどどうする?」
「リフト!!」
元気良く答える結花に
「わかった、じゃあそうしようか」
リフト乗り場について、料金を支払い終えた二人はリフトが来るのを待っていた。
「あっ!来たよ!」
指をさしてまるで子供みたいにはしゃぐ結花を横目に少しはにかんだ
リフトの進行方向に立ってタイミング良く膝を曲げてリフトに座る
「思ったより揺れるね」
「そうだね、落ちるなよ」
「落ちるわけないでしょ!」
そんな他愛もない会話を楽しんでいるとあっという間に降りる所まで来てしまった。
「楽しかったね」
「まだまだこれからだよ」
そう言って僕はこれから登る坂道の方を見る
「うわっ..きつそう....」
結花は登る前から弱音を吐いた
「思ってたより急坂だな」
結花に同情するように言う。
「じゃあ登ろっか」
「そーだね」
二人は足並みを揃えて山を登り始めた。
「私さこんなんなんだよ」
結花と突然の告白に思わず僕は足を止めた
「僕はそんな結花が好き」
自然と口から溢れた言葉に自分でも驚いた
「そっか、ありがとう」
結花はそう言ってはにかんだ。
途中、高尾山名物の天狗焼きを食べることにした
「おいしい〜!」
「おいしい!」
二人並んでベンチに座って天狗焼きを食べていた。
食べ終えるとすぐ近くにあったゴミ箱に包み紙を捨てて再び山を登り始めた
1時間ほど歩いた頃、山頂に到着した
「綺麗!」
結花は目を輝かせて山頂からの景色を見つめている
「あそこに望遠鏡があるよ」
「みたい!」
結花は望遠鏡の方へ小走りで向かった、嬉しそうにお財布から100円玉を取り出して望遠鏡に入れて覗く
さっきまで大きく広く見えていた景色がより鮮明に見えた
「和希も見なよ!綺麗だよ!」
結花の言葉につられて僕も望遠鏡を覗いた
結花の言う通り見えた景色はさっきまで見ていたものよりも遥かに綺麗だった
パチン!
突然の音と共に視界が真っ黒になった、時間切れだ。
「時間切れちゃった、でも綺麗だったね」
「でしょ!」
共感をもらえて嬉しそうな結花の顔を見て僕は思わず笑ってしまった
「もー!何で笑うの!」
「ごめんごめん、何か楽しそうにしてるのが嬉して」
僕はまだ抜けない笑いを堪えながら言った。
「そろそろ降りよっか」
「そーだね」
二人は下山し始めた
「見て見て!神社があるよ」
結花の後に続いてお賽銭を入れて手を合わせてお願い事をした。
「結花はどんなお願いしたの?」
「特別な人と特別な関係になれますように」
意味深に発せられた言葉に僕の動きは制止した。
「特別な人って?」
自分でも何でそんなことを訊いたのか良く分からなかった
「私のことを分かってくれて、私と二人だけの秘密をたくさん持ってる人」
「それって......」
「それと、その特別な人は今の今まで自分が特別な人だって自覚がなかった人」
「あれ〜!和希顔赤いよ〜」
いつも通りの結花に戻った、そんな気がした。
「じゃあ手繋ご」
僕はそう言って右手を差し出した
「ありがとう」
結花は左手を差し出して僕の右手を華奢な手で力強く僕の手を握った。
「ふふっ、これじゃ私たちまるで付き合ってるみたいだね」
結花は笑った
「じゃあ本当になってみるか?」
僕の言葉に結花は少し動揺していた、でも僕は揺らぐことなく真っ直ぐと結花のことを見つめていた。
数秒の沈黙の後、結花は答えた
「二人だけの秘密、また増えたね」
その返事を聴いた僕は思わず笑ってしまった。嬉しかったんだ
「ちょっと!なんで笑うのよー!良い返事の仕方だと思ったのに!」
少し頬を膨らませて言う結花を僕はとても愛おしく思った。
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