#2
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"結花の部屋"
慣れた手つきで新しいアプリをダウンロードしている、それは最近流行っている日記を書くアプリだ。
[今日から日記を書いてみようと思います、今日は初めて死のうとしました。でも運悪く同じクラスの奴と遭遇しちゃって止められちゃった、でもその後一緒に食べたソフトクリームは美味しかった。また食べたいな、和希と]
日記アプリを閉じた。
「ご飯よー」
一階からお母さんの声が聞こえて
「はーい」
返事をしてリビングに向かった。
黙々とご飯を食べていると
「成績、下がったそうじゃないか」
お父さんに咎められて箸が止まる
「ごめんなさい、次、頑張るから」
それだけ言って手早く夕飯食べ終えて自分の部屋に戻った。
ベットに倒れ込んだ結花は天井を見つめて
「確かに下がったけどさ...私だって頑張ったし、周りと比べたら高い方だよ..どうして解ってくれないの?」
腕で目を覆うように隠した、その隙間から一粒の涙が流れていた。
"和希の部屋"
「なんであいつ、死のうとしてたんだろ?」
机に向かっていた体を後ろの方に傾けて小さく呟いた。
机の上には普段より明らかに進みが遅い書きかけのノートとシャーペンが転がっていた。
「べつにいっか」
口癖のように口から零れた言葉に身を任せベットに倒れ込む
〜数時間後〜
「やべっ!寝ちまった!」
慌てて飛び起きてスマホで時間を確認すると、ホーム画面に大きく
2:39
と、表示されていた
「もうこんな時間かー、取り敢えずお腹空いた」
そう思い何かないかとリビングに向かうと
"お腹空いたら食べてね"
という書き置きと共に野菜炒めとお味噌汁が置いてあった、ありがたいと思いながら電子レンジで温めて炊飯器から茶碗にご飯をよそって、ダイニングテーブルに座り独りで夕飯を済ませてお風呂に入ってドライヤーで雑に髪を乾かして、また布団に潜って、深い眠りについた。
〜登校中〜
「ねっ!」
背後から聞き覚えのある声と一緒に右耳のイヤホン取られて反射的に振り向く
「なんだ結花か」
「なんだとはなんだ!」
「おはよう」
勢い良く声を出したと思ったら急に肩の力を抜いて挨拶をした
「おはよう」
僕も挨拶を返した
「今日の放課後はどこ行こっか?」
自然過ぎる流れに惑わされそうなるのを必死に回避しようとしても出てきた言葉は予想外だった
「どうしよっか」
「え!!戸惑わないの!」
目を丸くする結花を見て思わず笑ってしまった
「もー!なんで笑うの!」
「ほらもうすぐ学校着くぞ」
頬を膨らまして怒っている結花を横目に言った
「良いじゃん、どうせクラスも同じなんだし」
「ほらっ!!」
結花は半ば強引に手を繋いで来た
「行くよ!遅刻しちゃう!」
「ちょまっ!止まって!!」
「何よ」
つまんなそうに口を尖らせる結花
「何って..このまま学校入っていった勘違いされるだろ」
「何を勘違いされるの?」
そう問いかけてくる結花の顔は一見本当にわかっていないようにも見えるし、全てをわかった上で言っているのか僕にはわからなかった。
「わかるだろ、あれだよあれ」
「えーあれってなにー?私わかんなーい」
おちょくるようは声と言い方はまるで昨日初めて話した時のようだった
「ほら..あれだよ...あれ..」
早く察してくれと思いながら結花がそんな事をしてくれるとは思わなかった
「あー、そういうことか。理解理解」
いつものいたずら笑顔で言われた言葉、それと同時に結花僕の近くまで来て言った
「でもさー私たちって二人だけの秘密あるじゃん、それって付き合ってるみたいなもんだよね」
微かに頬が赤くなっていくのを感じた
「和希顔赤いよー」
笑いながら少し離れた結花は言う
「でもー"あれ"は"これ"だからね」
まるでデジャヴのように結花は唇に人差し指をあてながらはにかんだ。
「あー」
どこか呆気ない返事を返した。
結花はくるっと半回転して前を向いて走り出した
「じゃ!また後で!」
手を振った結花を見送るように僕は歩いた。
〜休み時間〜
「一緒にお弁当食べよ」
結花は手にランチクロスで綺麗に包まれたお弁当を持っていた
「いいよ」
僕は内心ちょっと嬉しかった
「やった!」
結花は僕の一つ前の席を半回転させて向かい合うようにして座った
「いただきます」
「いただきます」
手を合わせた後にランチクロスの結び目を解きながら結花は言う
「ねえ和希って部活とか入ってるの?」
「入ってないよ」
僕の返答に結花は勢い良く顔を上げて目を輝かせた
「じゃあ!うちの部活来ない!!楽しいよ!軽音!!」
急な勧誘に戸惑っているのも気にせず結花は淡々と説明を始めた
「実はさ、私が入ってるバンドの子が一人辞めちゃって、それで代わりに入ってくれそうな子を探してて」
「嫌だ」
即答だった
「そこをなんとか!」
両手を顔の前で合わせて頼み込んでくる結花を見て少し申し訳ない気持ちになった
でも、入る気にはならなかった
人と喋るのが苦手、理由はそれだけ。
「人と話すの苦手だし..」
「大丈夫だから!」
「楽器とかやったことないし」
「高校から始めた子もたくさんいから!」
「せめて、一回お試しで来るだけでも良いから!なんとか!」
「わかったわかったから」
必死に頼み込んでくる結花に圧倒され、仕方なく一度行ってみることにした。
「ありがとう!」
結花は嬉しそうに微笑んだ。
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