第27話 幼馴染赤面だけどフラグ立った?

「おはよ」

「お、おう……おはよ……!」


 今日は1学期の終業式で、これから夏休みを迎えるから浮かれている生徒達の群に紛れて登校中に、後ろからその声は聞こえてきた。

 その声の持ち主は見なくても分かる。そして横顔を見て惚れ惚れして安心をする。


 その声の主は俺の幼馴染にして、意中の相手の青山流歌だった。大体半年くらい一方的に嫌われていて疎遠になっていた幼馴染だけど、今はなんか自然と仲直りできて、以前は挨拶しただけで話しかけないでと言われたくらいだけど、こうして向こうから話しかけられるくらいには関係は戻りつつあった。


「流歌今日は1人なのか?」

「今日はってか、いつも1人だけど」

「そ、そうなんだ」

「あんたの方こそ、彼女と一緒じゃないワケ?」

「へ? 彼女?」

「この前家に連れ込んでた彼女。緑川さんだっけ?」


 は? 緑川が俺の彼女? どこからそんな情報流れてんの?


「学校でチラホラ噂になってるし」

「いやいや待て待て待て。俺と緑川は付き合ってないからな?」

「別に隠す必要なくない」

「いや、隠してるとかそういうんじゃなくてだな……」


 確かに、学校でも作戦会議だ! とか言って連行されたりしてるし、作戦会議の内容だったり、緑川には他に好きな異性が居るって知らない人から見りゃ勘違いだってするかもしれないよな。


 これは前に危惧した事ではあった。それが例の先輩の耳に入ったりしようもんなら緑川撃沈ルートに全速前進だぞ。


「お似合いだと思うし」

「いや、違うんだ流歌……俺は緑川と付き合ってないんだって」

「別に隠さなくて——」

「俺が好きなのは流歌、お前なんだよ……!」

「……は?」


 言った。言ってしまった……

 緑川の恋愛に支障をきたしたくないって思いと、流歌がまた遠くに行っちゃうんじゃないかって不安が焦りに繋がって、勢いで言ってしまった。


「だから、俺は緑川とは付き合ってないんだって」

「あ、あ、あ……あんた……な、何言ってんの……」


 流歌の顔は真っ赤だった。すんげー耳まで真っ赤。そして周りの生徒達からの熱い視線。あ、これなんかヤバくない? なんか口笛とか聞こえてきたけど。


「俺はずっと前から流歌の事が好きで」

「わ……私先行くから……」

「え……? ちょっと待ってよ流歌!」

「う、うっさいバカ!」


 告白の返事を貰えず、流歌さんは顔を真っ赤にしながら逃げるようにして立ち去ってしまった。

 取り残された俺は周りからの好奇の視線に晒されながら、一人恥ずかしく登校するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る