第7話 赤いきつねと緑のたぬき合戦
緑川が音頭を取り本格的に流歌と俺の仲直り作戦が実行されようとしている。
場所は行きつけの喫茶店で、ここなら流歌に会う可能性が低いし、話し合いにはうってつけの場所だった。
「とりあえず、松橋くんがしちゃったこと全部洗いざらい吐いてもらおうか」
「いや、だから心当たりがないんだって。それになんだよその刑事の尋問みたい雰囲気出しやがって」
「酷い言葉言っちゃったとかないの? 私に対しても悲しくなっちゃうような言葉言ってきてたし。でも、それはそれでアリだった時もあるしなんとも言えないけど〜。でも、個人差はあるだろうし、青山さんにとっては傷つく言葉だったのかも!」
「お前、マジ頭大丈夫か?」
心当たりがないのはやはり厄介過ぎる。流歌自身から何かを聞き出せれば良かったけど、俺は話かけられないし、なら緑川に仲良くなってもらって聞き出して貰うか? いや、そもそも緑川はいきなり核心をつきにいこうとするからそこで察しられてもマズいし、だから緑川を使って流歌に接触は案としては除外だな。
「いつまでは仲良かったの?」
「高1の秋くらいな気がする」
「その時って何してたの?」
「その時期はちょうど写真展のコンクールがあったから、応募する為の写真撮ってたけど」
「その時は青山さんとは会ってたの?」
「いや、会ってないな」
「うーん」
ここまでの素朴な情報を聞いて緑川は唸り声を上げながら頭をポンポンと叩く。そして閃いたかのように手をポンっと叩いた。
「何か分かったのか?」
「チョコケーキも食べるねっ!」
「はい?」
「いやぁ、今ショートケーキ食べちゃったけどさ、正直チョコケーキとも悩んでたんだぁ。我慢しようと思ったけど、どうしても食べたくなっちゃったからさっ!」
「今、俺と流歌の間に何かあったこと考えてくれてたんじゃないの……?」
「そんな少ない情報だけじゃ分かるわけないよ〜。私超能力とか使えないしー」
「なんか感心した俺がバカだった……」
「そうね、光輝くんは本当に大バカさんよねっ!」
「ち、千歳先輩……苦しいです……」
「私の気持ちを知った上で他の女の子と私のアルバイト先に来て、さらに他の女の子の話をするなんていい度胸してるわね。いつもは売る側だけど今日は私が買ってあげるわ、その喧嘩腰な態度」
「ちょっとタンマ……マジで……マジで締まってますから……」
「ま、松橋くん!? 大丈夫!? ちょ、ちょっと! やめてあげてください!」
あきらかに大丈夫じゃないんですけどね。でもこうなった千歳先輩を落ち着かせる方法はもう千歳先輩が落ち着くまで放置するって選択肢しかないからな……俺あとどれくらい首絞められればいいんだろう。
「あなたには関係ないでしょ? これは光輝くんが浮気性なのがいけないのよ。問題はこの下半身がだらしない駄犬なのよ」
「松橋くんが下半身にだらしなくても、今はとりあえずすっごい悩んでて、いくら駄犬でもメンタル死んでるからやめてあげてください!」
「緑川、お前はフォローしてるのか余計堕としたいのかどっちなんだ!?」
「フォローに決まってんじゃん!」
「なってねーんだよ!」
全然フォローになってないし、むしろ俺が下半身がだらしない駄犬ってのが共有されてるんだけどどうしてですか?
「光輝くん、今すぐこの頭おかしい同級生とは距離を置きなさい。でないとあなたの枕が血で濡れるわよ。この手の女は頭がおかしいから依存しやすくて些細なことですぐ頭に血が上っちゃうの。」
「ちょ、私はそんなことしません! あなたの方こそ、光輝くんの首を絞めて殺す気じゃないですか!? あなたの方がよっぽど危険人物ですっ!」
「なんでここ2人で修羅場ってんの……?」
「「誰のせいだと思ってるの!?」」
「うわぁ……息ぴったり。本当は二人とも仲良いんだよね? そうなんだよね?」
「誰がこんな泥棒女のこと好きなもんですか」
「私だってあなたみたいに非常識な暴力女と仲良いだなんて、こっちから願い下げです!」
緑川と千歳先輩のバトルが始まった瞬間だった。
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