第十一話 騎士隊による捜索
「勇者マサミツは北、ルオラス国方面へ向かったと報告を受けている。カルデローネ自衛騎士隊の誇りにかけて、勇者マサミツを拘束、連行する! みな、準備はいいか?」
「はい!」
カルデローネ自衛騎士隊、大隊長キール・セドフ。髪は黒いが白髪が混ざっており、鋭い眼光を持っている。彼が号令をかけると、数百人に及ぶ騎士隊員が敬礼をした。
カルデローネ自衛騎士隊は、国の治安維持、戦争や魔物の襲撃への応戦、災害時の救助、復興活動など、活動は多岐に及ぶ。
今回、キール・セドフ大隊へ勇者マサミツの捜索、拘束、連行の任務が与えられた。
「それでは準備でき次第、小隊に分かれ捜索を開始せよ!みなに善行神の加護あれ」
ウィルも捜索の支度を済ませた。日頃ウィルは中隊長をしているが、今回は小隊長を務める。
「よう、ウィルフレド。元気そうでなによりだ」
後ろからウィルの背中を軽く叩きながら話しかけてきたのは、キール・セドフ。自衛騎士隊に入隊してからずっと世話になっている。
「今回の任務は俺とお前の隊を含めて十隊が国境付近の捜索を行う。準備ができ次第、北の転移装置のところまで来い」
「了解しました」
小隊の全員がいることを確認し、転移装置の場所へ向かう。この転移装置は、移動が楽になるようにと、マサミツが作ったものだ。専用の祭壇に魔法陣が描かれており、魔力を流し、レバーを下ろせば誰でも転移できるようになっている。テナシャエル北部にある北の転移装置は、カルデローネ王国の北の国境線付近の祭壇へ転移する。
「まさか自分が国のために作った装置が、自分を捕まえるために使われるとは、作るときには考えもしなかっただろうな」
キールがそう言いながら装置のレバーに手をかける。
「では、行くぞ」
視界が白く染まり、別の景色が目の前に広がった。転移が完了したのだ。
「ここからは小隊ごとに行動する。散開!」
他の隊と別れ、ウィルの小隊は捜索を開始した。
今いる場所はカルデローネ王国とルオラス国の国境付近。ここには森が広がっている。魔物はいないが、危険な動物や虫がいるので注意して進まなければならない。
「みんな、全方向へ注意を怠らないように」
小隊は基本的に十人で構成される。剣士七名、魔術師三名。魔術師のうち最低一人は治癒魔法が使える人間が配属される。
前進するときは、剣士が魔術師を囲み、警戒しながら進む。
数十分ほど歩いたが、動物などに襲われることなどはなく、少しずつ気が緩んでいた。
そのとき、ウィルの正面から風属性の魔法が向かってきた。
ウィルは魔力感知で察知し、咄嗟に左手の盾で防ぐ。重い衝撃が腕に伝わってきた。
「敵襲!」
魔法が放たれた方向を警戒し、戦闘態勢に入る。その方向から歩いてきたのは、ウィンディウルフ。魔物だ。本来この森に魔物などいるはずがない。それが、何故かいるのだ。
「なぜここに魔物が!?」
小隊の一人が言った。
「考えても仕方ないよ。魔力感知でも他の反応は無い。敵はおそらく一頭。ウィンディウルフは強いけど、十分、勝算はある」
ウィンディウルフが翔けた。ウィンディウルフは常に風を身に纏い、自身の素早さを向上させている。また、飛び道具や魔法なども多少逸らすことができる。
即座に後ろに回り込み、襲い掛かってくる。全方位を警戒しているため、不意を打たれることはないが、突然向かってくるそれに対して隊員は防御するしかできなかった。
ウィルや魔術師が魔法を放っているが、ウィンディウルフが素早く、全て避けられてしまう。
防御は十分なので負けることはまず無いだろうが、攻撃が当たらなければ勝つことはできない。そのことはウィルもわかっていた。
「なんとかあいつの動きを鈍らせるか、動きについていかないと……」
ウィルがそう言った直後、上空を何かが通った。
見上げてみると、それは人だった。銀色の短髪で、軽装備の女性。それが誰なのか、ウィルはすぐに理解した。
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