第四話 再会
「あれ? マサミツ……? やっぱりマサミツじゃない! 久しぶりー!」
振り返るとそこには、一人の女性が立っていた。
彼女はサラ。銀髪で髪が短く、整った顔立ちをしている。
サラも冒険者で、昔はマサミツとパーティーを組んで旅をしていた。
サラは風魔法使いで、それを利用して自身の素早さを上昇させて素早く立ち回り、敵を翻弄する戦闘スタイルなので、軽量化のために露出が多い装備である。
「久しぶりだなぁ、サラ。時々でも会いに来てくれればよかったのに」
「しばらく会ってないうちにマサミツがどんどん有名になって、私みたいなごく普通の冒険者が会いにいけると思うー?」
サラが冗談めかして笑った。
「サラは全然ごく普通じゃないと思うけどな」
サラは普通の冒険者と呼べないほどに強い。昔、同じパーティーで活動をしていた頃、マサミツは何度も助けられていた。
「この子はどうしたの?」
サラがオトハを見て、質問した。
「帰路の途中でメルトン村の外れにいた子でね。火属性持ちなんだ」
「メルトン村で火属性……なるほどね」
それだけでサラは全てを察したようだ。メルトン村のことは、昔のパーティーメンバーはみんな知っている。
「ああ、自己紹介してなかったよね。私はサラ。名字はないから、サラって呼んでね」
「サラさん、よろしくお願いします!」
オトハはもうサラと打ち解けあっている。
2人が仲良くなれそうでよかった。
「じゃ、俺たちは王城に用事があるから」
「はいはい、流石ね、勇者マサミツ様」
「サラまでその呼び方は勘弁してくれよ……恥ずかしいんだぞ」
「ごめんごめん、それじゃあね」
サラと別れ、二人は王城への道を歩く。お昼時ということもあってか、多くの人々や荷車が行き交っている。
「サラさんとはどういう関係なんですか?」
「なにかと縁があってね、小さい頃は孤児院で一緒に過ごしてたんだよ。そのあと別れたんだけど、冒険者になって再会して、一緒に旅をしてたんだ」
「マサミツ様って孤児だったんですか?」
「まあね」
そんなことを話しながら歩いていると、城門の前に着いた。
王城はレンガ造りで豪華な見た目をしており、その周りを強固で巨大な壁が囲んでいる。
さらに、何も無いように見える空中には防御結界が何重にも展開してあるので、そう易々と突破できるものではない。
【
「マサミツ・アイダです。魔王討伐の報告に参りました」
「マサミツ様、ご無事で何よりです!魔王を討伐されたのですね。さぞ国王様もお喜びになることでしょう。ささ、どうぞ中へ。案内の者をお呼び致しますので、エントランスでお待ちください」
オトハも、すんなりと中へ通してもらえた。
エントランスで待つように言われたので待っていると、一人の男がやってきて、声をかけてきた。
「マサミツ、久しぶりだね。元気にしてた?」
「ウィル、久しぶり」
マサミツがウィルと呼んだその男は、茶色の髪に、赤い瞳を持っている。そして、動きやすそうな鎧を身にまとっていた。
「そちらのお嬢さんは?」
「オ、オトハです、よろしくおねがいします」
オトハは、王城の中で出会う初めての人に対し、緊張で身体を硬直させながら言った。
「そんなに固くならなくてもいいよ。オトハちゃん、よろしく。僕はウィルフレド・ロサス・アルカンタル。ウィルって呼んでくれると嬉しいよ」
ウィルは優しく微笑み、一礼した。自己紹介をしている時の姿も、とても好印象なものだ。
「よろしくお願いします、ウィルさん!」
「俺とウィルは昔、サラと一緒に同じパーティーを組んでたんだよ」
彼、ウィルフレド・ロサス・アルカンタルは、この国で︎︎かなり有名な貴族、アルカンタル家の次男だ。
貴族ではあるが、身分による差別意識は全くない。冒険者を志したのは国民を守りたいからだという。
「ところでウィルはどうして王城に?」
「実は、カルデローネ自衛騎士隊の中隊長に任命されてね。中隊長は外出任務がない時は城の護衛を時折任されるんだよ」
カルデローネ自衛騎士隊は王族の護衛や国内の治安維持、戦争時の国の防衛に対処している隊だ。
国民を守りたいという強い思いが興じて騎士隊に入隊したという話は聞いていたが、二十代という若さで中隊長になるとは、さすがはウィルと言ったところか。
「マサミツこそ、今日は魔王討伐の報告をしに来たんだよね?殺しても死なないと言われるあの魔王を倒すなんて、本当にすごいね。僕が案内役だから、国王様の所へ案内するよ」
そう言われ、二人はウィルについていく。
カルデローネ王城の廊下は絨毯が敷かれ、所々に花の入った花瓶が飾られている。窓はかなり大きく、常に外の光が廊下に差し込むようになっている。
歩きながら、マサミツは気になっていたことをウィルに尋ねた。
「そういえばさっきサラに会ったんだけど、サラは今何をしてるか知ってる?」
「ああ、サラなら冒険者をしながら孤児院で先生をやってるよ。たまに会って話すんだけど、冒険の合間の癒しだって言ってたね」
なるほど、彼女らしい。世話好きな性格なので、孤児院の先生という仕事はぴったりだろう。
マサミツは勇者、サラは冒険者と先生、ウィルは自衛騎士隊員。
パーティーを解散してから、それぞれがそれぞれの道へ進んでいるようだ。
「着いたよ。マサミツ、オトハちゃん」
目の前には豪華な装飾が施された大きな扉がある。
ウィルがそのトビラを四回ノックした。
「失礼致します!カルデローネ自衛騎士隊、キール・セドフ大隊長傘下、第六中隊長ウィルフレド・ロサス・アルカンタルです! 勇者マサミツ様がお見えになっております!」
数秒待つと、扉が開いた。
中は広く、天井が高い。
大きなステンドグラスやシャンデリアなど、豪華な装飾が多く施されている。
オトハはウィルと共に立ち、マサミツは国王の前まで進み、跪く。
「魔王エドゼルの討伐、完了致しました」
「よくぞ戻られた、勇者マサミツ殿。調査班からも、魔王の反応が消失していくのを確認したと報告を受けている。魔王エドゼルの討伐は人族の長きに渡る悲願であった。本当に感謝する。明日の夜、祝宴を開こう。ぜひ来てくれたまえ」
「ありがたきお言葉」
一連のやり取りを終え、二人は待合室へ案内された。なんでも、マサミツと話したい人がいるようため、少し待っていてほしいとの事だった。
……一体、誰なんだろう。
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