全裸男VS全裸女
青水
全裸男VS全裸女
世の中には変わった性癖を持つ者が、意外とたくさんいる。たとえば、露出性癖の露出狂。彼らは夜な夜な町に現れて、自らの肉体をさらけ出したのちに、さっそうと去っていく。
この町には現在、二人の露出狂が存在している。一人は男で、もう一人は女。それぞれ、全裸男と全裸女と呼ばれている。
彼らは二人とも顔をサングラスとマスクで隠し、ロングコートを身にまとっている。そして、一人寂しく歩いている人々に向かって、ロングコートをばっと勢いよく開く。中には当然何も着ていなく、裸である。
きゃああああ!
ぎゃああああ!
人々の驚き叫ぶ姿を見て満足すると、帰還するのである。
そんな二人がついに出会ってしまった。もちろん、前からお互いの存在については認知していた。いつか、その好敵手と相まみえる日が来るのだろう、と思っていた。それが、今夜訪れたのだ。
全裸男は――そして全裸女も――前からやってくる人を見て、違和感を抱いた。その格好は自分によく似ている。顔にはマスクとサングラス、ロングコートをまとっていて、足には走りやすい履きなれたスニーカー。
まさかこいつは……、と二人とも思った。
二人が足を止める。
そして、ロングコートの中身を――生まれたままの姿を相手に見せつけた。
「やはり……お前は『全裸女』!」
「うふふ……そういうあなたは『全裸男』ね」
「くっ……同じ性癖を持つお前に裸を見せつけても、まるで興奮しない!」
「ええ、それは私もよ。でも、あなた……なかなかいい体してるわね」
「君もね。とくに胸とか」
「変態」
「そんなふうに罵られると、別の性癖に目覚めてしまいそうだ」
「あらあら、ドエムで露出狂だなんて救いようがないわね」
「露出狂の時点で救いようなんてないさ。俺たちはともに立派な犯罪者だ」
「同じにしないでほしいわね。私は男性諸君におかずを提供してるのよ。これはある意味ボランティアと言えるわね」
「トラウマになる子だっているだろうに」
「そんなことを言ったら、あなたのほうがトラウマになる子は多いでしょ? どうせ、女子高生に裸を見せつけて興奮してるんでしょ?」
「うーむ、ぐうの音も出ない」
二人が初対面のくせに親しげに会話していると、
「おい、貴様ら!」
「「――っ!?」」
夜回り中の警察官が現れた。
二人は警察官のほうを向くと、二人同時に裸を見せつけた。
「貴様ら、まさか……全裸男と全裸女か!?」
しかし、二人は答えず、裸を見せ続けている。二人とも、警察官に裸を見せつけるという背徳的な行為に興奮して、鼻息が荒くなっている。
「クソッ! 逮捕だ! 現行犯逮捕だ!」
警察官が走り出すのと同時に、二人も走り出す。二人は並んで走る。二人とも、警察官よりも足が速かった。二人とも学生時代は短距離の選手だったのだ。足の速さには自信がある。体力もあるので、長距離だって強い。
二人は警察官を振り切ることに成功した。
足を止めると、二人は握手した。
「なあ、今度、一緒に活動してみないか?」
「いいわね。同時に男女の裸を見せつけられて、人々はどういう反応をするのかしら?」
「わからん。実に楽しみだな」
そうして、二人は連絡先を交換して別れた。
その後、全裸男と全裸女がタッグを組んだ、という噂が流れた。町の人々は恐怖のタッグに戦慄したのだった。
全裸男VS全裸女 青水 @Aomizu
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