そして再び魔界飯

意気消沈して何も精を出していない筈の後藤はと言うと・・・

悪魔居酒屋にて反省会を行う事になった。


「まぁ、奢ってやるから元気出しんしゃい」


「んじゃあ、とりあえず、ビールで。」


勝手知ったる悪魔のオーダーで出てきたのは何かベーコンの塊みたいな物体。

果たしてこれは・・・

「ジゴクワニの燻製だぞ」


「人間の食い物なんですかァこれ!?」

とは言っても、匂いはスモーキーで肉汁が沁みているそれは

不健康な色を湛えていながらも良い匂いがする。

「これでも結ちゃんは美味そうに食ってたぞ・・・んヴッ!」


「いや、悪魔が咽てるじゃないですか?」


「香草が効いてるのだ。棘のある匂いのする脂身が冷めるといよいよマズくなるぞ」


あ、鶏肉のハーブ焼きみたいなのを固くしたみたいな食感。

しかし肉汁が沁みてくる味が塩味に香りが効いていて・・・

「んヴッ!って、美味ァァァい!!」


「しっかしなんで結ちゃんは咽せないで食えたのだ?いやー怖いぜ。んヴッ!」


「そういえば、悪魔のお酒ってどんなヤツあるんスか?ビールは普通にクラフトビールっぽいけど」


「お待たせしやィしたー。天王星サワーでーす」


「すんません。青い塊が中で発光してるんですけどコレ。」


「大丈夫だ。最近は裏ルートで人間をもてなす金策を図っていてな。

 どれ、俺が毒見をしてしんぜよう。悪魔は毒物が大好きだがな」


「全然アテにならねー・・・」


すると飲み干した芥子河原の目や鼻が耳が青く煌めいた。

「・・・これは人類には早いぜ。飛ぶぞ!?」


「サーせん。普通の酎ハイくださーい。」


「かしこマリー!」

平和そうで物騒な飲み屋で宴は続いていき

後藤穣(38歳)は悪魔の世界の飯をさんざ食わされたのだった。


そうして宴もたけなわ。

「それでんむゥ、あの試合の16分30秒のデビルラリアットがなァ?

 味方に誤爆してマスク脱がされたんだよ。あれ高かったのにィ!」


「芥子河原さん、それ20ループ目っすよ。もうべろんべろんじゃないですか」


「安心しろ。支払いは俺の財布から引っこ抜いてくれェ。」


「あんだけ飲んで食っても5千円なのか。逆に怖いよここ!?」


「まだワニの肉残ってるじゃあないか?んヴッ!

次は海鮮居酒屋で海老を食べまくりに行くぜー!」


「海老はしばらく食えません。もうみたくない・・・」


「人は忘れて生きていくモンだぜ。」


「そんなモンですかね。」


「そうだよ」


芥子河原は青く光る酒を後藤の口へと押しこんだ。



「天王星サワー。悪魔でも記憶が飛びそうになるから気を付けろ!

 こんなもんが世に蔓延ったら悪用されちまうわ。」


芥子河原は失神した後藤を担いで人間の街へと戻って行った。


目が覚めるとヨミサカクリーナーズの詰所。

朧気に悪魔の街に降り立った記憶があるが覚えてない。

悪酔いの感覚も無くまるで泥の様に眠った気分。夢見心地・・・

酒臭くて居酒屋で炙られてきた匂いは拭いきれないが

おそらく桃源郷だったのだろう。日頃のストレスや

将来の悩みみたいなのは吹き飛んでいた



「あ、。探偵さんトコの悪魔の方がお詫びにって置いてったんですが食べます?

 海老煎餅。」

そういってノベルティの如くエビ煎餅のダンボール箱を佐藤が持ってきた。


「エビ・・・海老!?イヤァァァ!!!」


「海老の悪魔にでも襲われたんですかね?」


「そもそも悪魔の街で身包み剥がれないのがおかしいんですよ」

モノは疑って掛かる前野


「オレも行こうかな・・・強いヤツと戦えそう」

息巻く詠泉坂隊長。


「隊長だけ格ゲーな件」


今日もヨミサカクリーナーズは一名を除いて平和なのであった。

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