悪魔のストリップ
「あれ?後藤は?暇なときでも詰所でゲームしてるじゃん」
「あぁ、この前の悪魔さんが良いトコに連れてって云々」
白→青→紫→茶→黒帯とグレードアップしていく帯の中でも
紫帯までいただいてるぐらいのグラップラーである。
戦闘で背中を預ける程の信頼性を誇る前野はさておいて
後藤はエンジニアである事を良い事に日々のトレーニングを怠っている。
「まぁ本来戦闘に関しては素人なのに妙に生存能力高いですからアイツは。」
「必殺インフェルノオモプラッタの実験台にしようと思ってたんだがな」
「なんすかその技。」
「なんか、腕の骨が3回転するぐらいのヤツだ。」
「人間には使えないですね。」
そんな談笑とは裏腹に悪魔達のコミュニティである
ここでは人間の法など存在しないある意味異世界めいた空間。
目移りするネオンが煌めくその地下街は人間が飲まれたら最期。
生きては帰れないという・・・
「やっぱサキュバスっすよね!?」
そうであっても息巻くのは後藤穣38歳。中年だが顔が若いと良く言われるのも
彼の中のリビドーが凄まじいせいであった。
人間の世界と違う桃源郷の夜に彼は誘われてしまったのだ。
「結ちゃんには内緒だぜ。悪魔ちゃんとのお約束だ。
予算はおいくら万円ぐらい?」
「まぁ貯めに貯めておいてこんぐらいは・・・へへ・・・」
「隠しとけよ?ここでは盗みは禁止だが、分厚い額なこった」
ここは悪魔達の欲を満たす一連の淫靡が行われるストリート。
後藤を案内する芥子河原は歩く無料案内所なのだ。
きっと悪魔のそういうお店はヤバいに違いない。
日頃の任務の焦燥感からかけ離れて
たまには浮世離れしたってバチなど当たるモノかと
根拠のない自信が彼の脳を占有していた。
「ここが一番ヤバいNo1店かな?俺が案内できるのはここまでだぜ。」
「へぇ!?なんすかココ!?って言うか芥子河原さんは行かないんですか!?」
「結ちゃんとグリモワールで契約してるので浮気は出来んのだな・・・
男ならいっちょかまして来い!」
「ウっす!」
受付にはそういう漫画に出てきそうな布面積少ないお姉様。
あぁ、この匂いってもしかして媚薬の香り?
部屋へと通されると待ってる時間と言う概念が己をアイドリングさせる。
耳に響くのはヴィバルディの冬のBGM。これから春になるのよね!
「お待たせしました。」
来た。もうこの瞬間だけで構わない。
店の名前は甘エビ倶楽部。確かに甘エビ倶楽部である事を
後藤は思い知らされる。本当に海老人間もとい海老悪魔っぽいのだ。
赤く色づいたそれは体温で蒸しあがって引き締まった体格だが
そこはかとなく、いや、どうあがいても海老なのだ。
「え?要するに海老の悪魔さんで、脱皮するストリップショー?」
「あんまり見ないで下さい。恥ずかしいですゥ・・・」
「(SAN値が無くなって行く後藤)」
なんかこう、人間としてのムラムラは無くなっていた。
後藤は海老悪魔の脱皮と言う生命の神秘に立ち合い
彼が店から出てくる時には何かを無くした様な表情になっていた。
「なんだったんですかアレ?」
「知らんのか?悪魔は甲殻類が大好きだってな。」
「アレを拝んでも浮気にはならんでしょう!」
「馬鹿野郎!テメエあれで楽しめないとか悪魔じゃねえな!?あ、お前人間だもんな」
後藤が観た景色は人類には早すぎる・・・そんなナイトメアであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます