ヨミサカ・クリーナーズ:詰所にて

五穀イツキくんってば、お酒は飲める?なんかすい臓がんだったらしいけど」


「オルタギアの実験の効果で健康な体にはなったんですけどね・・・まぁ」


謎のデバイスであるオルタギアの違法な実験により癌を克服した男:佐藤五穀サトウ・イツキ

そしてヨミサカクリーナーズの尖兵である前野豊、後藤穣の「五穀豊穣トリオ」は

家賃を浮かせるのといつでも出動できるようにヨミサカクリーナーズの事務所の

地下にある詰所で奇妙なシェアハウスめいた生活をしていた。

回復魔法の使い手であり、医療担当の御子柴摩耶ミコシバ・マヤが肩凝りに首を捻りながら

「お疲れさまでしたー」と帰ろうとする。


「摩耶ちゃーん!今日の仕事アガリでしょ?飲もうよー。」


「綾とご飯食べに行くから、また今度ねー。お疲れー。」


「また地獄の野郎飲みか・・・摩耶ちゃん酒癖悪いからいいんだけどさ」

前野はちょっと安心した素振りを見せる。


「え?そういう感じ何すか?なんか乱れちゃったり・・・」

五穀イツキは少しだけ良からぬ事を妄想してしまっていた。


「魔法少女時代の事をぶり返して恥ずかしくなって泣いたりするんだ」


前野はその時の記憶を飛ばすかのようにビールのロング缶を飲み干す。


「酒って余ってる時の安心感が良いよねー」

少しずつ卓に並んでいく酒の空き缶たち

酔ってる時特有の頭の悪い話が次々登って行く。


「つって、さっきから美味しい飯がテーブルに並んでるけどコレは?」

誰が作ったのかも知らぬ焼き鳥を串からウシウシと食べる後藤。


鶏肉を切り分けて串を通してしっかりと焼いたそれは

まるでお店で食べる様な味だった。


五穀イツキクンがねー。元調理師だから予算の範囲内で

 色々やってくれてんのよ。」


「・・・マジ美味しい。コンビニ飯買うと結構嵩むからなぁ。」


酔いが進むにつれて食欲が増していく。

仕入れた鰤を煮込んで鰤大根として出したら

あっという間に汁まで飲み干し、ハイボールで流し込む前野。


「佐藤くんも飲んで飲んで!一番頑張ってんだからさ!」


「僕は病気になる前から下戸だったから食べる方が好きですねー。」


「あっ、そうかぁ。飲まない人でもそういう癌とかになって

 苦労するんだなぁ・・・」


「不思議ですよね。人って生きる間に良い事ばかりじゃないのに

 みんな死んで終わるって結末は変わらないって・・・」


「んぁー・・・分かるゥー」


「後藤は明日には忘れてるだろこういう話は」


「失礼な!?こう見えてマッドサイエンティストな俺様から見て

 因果応報しない様に日頃から行いを弁えとるわ!」


「自分をマッドサイエンティストとか言うのが痛い。五穀イツキくん。

 これがダメなオッサンだぞ?」


すると、詰所のドアが開いて警察官時代は機動隊として馴らしていた

身長185cmの大男、詠泉坂謙吾隊長が顔を出す。


「あ・・・これはいわゆる懇親会でして・・・」


後藤が気まずそうに言い訳する。隊長は仏頂面で彼らの方へ向かってきた。


「飲み会やるんだったら俺にもメールしといてくれよー!?

 なんか美味そうな飯並んでるし。」


「あっコレ佐藤クンが作ったんすよ。」


喉を鳴らしながらビールをジュースの様に飲み干していく詠泉坂隊長・・・

「あー。酒飲むと柔道したくなるなオイ!」


「どういう理屈ですかそれ?隊長のパワー、人間離れしてるじゃないっすか?」


「そもそも後藤はもっと鍛えないとなァ!?」


「勘弁してー!!飲み食いしたの出てきちゃう!」


何やかんやでヨミサカクリーナーズは仲間を大事にする

温かい職場なのであった・・・

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