悪魔、暴走

綾、結、そして悟の3人はヨモツイクサの霊核の結晶を持っていたが為に

祟り神に変異したイザナギが作り出した異空間に巻き込まれてしまう。

その階層構築ダンジョンビルドは3人を分断する事は無かったが

装備が万全ではない状況で戦う事を余儀なくされてしまう。

さながら老朽化して錆び付いた病院の様な場所・・・

薄明りが明滅しながら、朧気に全体が把握できる状況だった。


そもそも災厄と言うのは備えてない時に起こるもの。

配られているカードで勝負するしか無いのだった。

最悪な事に悟は転移したショックで気絶している。


「ヴェっさん!起きて下さい!やっぱりさっきまで魔力減らしてたのが・・・」


「・・・悪魔も気絶するんだな。おそらく神性の力でダメージを受けたんだろう」


綾は手元に叢雲刀を召喚し、戦いに備える。


既に群体獣トークンズがワラワラと押し寄せ

彼らに迫りつつあった。


結もリュウノアギトを諸手に纏い、突撃を開始する。


まるで無機質で表情が見えないながらも獰猛に鎌の様な腕を叩きつける

トークンズ。それをガードすると結は一気に拳を叩き込んだ。

リュウノアギトの魔力を込めたそれはトークンズの一体に炸裂すると

魔力のバーストが発生して周辺の個体まで伝播して爆ぜる。


綾も叢雲刀で敵の腕を斬り落としてから突き刺しで心臓部まで穿ち

魔力を叩き込んで一気に爆発させる。


だが、打ち倒しても次から次へと湧いて出てくる状況。

戦闘経験の豊富な綾はこの階層ダンジョンの主を倒さなければ

いつまでも終わらない事を確信した。


魔力プロテクションが働いてるから大きな傷にはならないものの

敵の攻撃に何度も吹き飛ばされる結。


「はぁ・・・はぁ・・・ヴェっさんを守らないと」


ヨモツイクサの霊核の石の魔力をコントロール出来ず

拳で殴りつける度に身体が重たくなっていく結。

使い方を間違えているのか・・・


「前へ!前へ!!!このォォ!!!」

トークンズの槍衾やりぶすまを魔力の放出で破りに掛かる綾。

僅かに敵の配置が薄くなったところでより禍々しい狂気が

彼女の第六感の様な部分を刺激した。この先に何か居る・・・?


その頃、結の抵抗も限界に差し掛かっていた。

初めて諦めと言う選択肢が過った。そもそも自分は一回死んでいるから・・・

自嘲する感情が湧き出た瞬間、一気に薄氷が割れた様な疲労感が押し寄せ

トークンズの個体の刃が結に襲い掛かった。


それは彼女の肉を切り裂く筈であった。巨大な鎌の様な腕は

強烈な金属音と共に弾かれた。


「ゥウ"ウ"ウ"」

形容しがたい猛獣の様な唸り声。

「・・・ヴェっさん?いや、これは・・・?」


気絶した筈の芥子河原が無意識のまま悪魔を解き放ち

群がっていたトークンズを瞬く間に焼き払う。

その目はいつも見せる人の気持ちをおもんばかる様な優しい目じゃなくて

獲物を狙う・・・本能のままに戦う暴走形態であった。





「」

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