悪魔のマジファイト

「さぁ、魔界プロレスの達人、そして炎を操る芥子河原!」


鼻から火を噴くマジックを披露したら鼻毛が燃えたでござる。


「そして、魔術スキルと拳のマエストロを自負する村田!」


こちらはクールにシャドーボクシング。


強固な悪魔時空がデモンズジェネレーターによって形成され

どんな大爆発が起きても観客席にはなんら被害は及ばない。


身長179cm、体重72kgの芥子河原に対して

身長180cm、体重73kgの村田・インフェルノ・龍二


「・・・」


「・・・」


『『・・・』』


「煽りでいいから何か喋ってくれよ!」


「あんたこそ魔界プロレスラーでしょう?」


「っ・・・!?あー、やりづらいんだぜ・・・」


ふと、虚空を見上げる芥子河原。彼はこの段階で目線のトリックを使った。


それは一呼吸で相手の間合いに入るデビルステップ・・・

蟹の様に走り、それでいてジグザグに前へと忍び寄るその独特な動きは

誰にも予想できない筈であったが・・・


ドゴォッ


「芥子河原、デビルステップで接近するも村田の左ボディブローが突き刺さる!」


実況も観客席も一気に盛り上がる。

悪魔時空の結界の隅まで吹き飛ばされる悟。


「オロロロロロ・・・ゴボッ!なるほど、小細工は通用しないようだぜ?」


ボクシングのフットワークの横移動を利用したカウンターブローを受けた。

しかも、自分と同じく炎の魔力を纏った拳。

被弾した箇所から焦げた匂いがする。戦闘服の腹の部分に

刃物で抉った様な傷が出来ていた。


「なら、デビルステップのギアを上げるだけだぜ!」


ギュオン!と魔力が上昇する様なオノマトペに添えて

「必殺!蟹分身!」


「あーっと!芥子河原選手の身体が横移動で複数に見える!」


「なっ!あそこからまだ早くなるだと!?」


流石に村田も驚いた様子。


「うォォォォン!」


ドップラー効果まで発生する横移動から徐々に前進していく。


そこに炎を帯びたジャブを凄まじい速度で連打する村田。

しかし、当たらない。試合の加速と会場のテンションの上昇が比例していく。

「だぁっ!」


かならず芥子河原が懐まで潜り込んで来ると言う事は分かっていた。

目が慣れた所で全力の右ストレートが彼のボディへと命中する。

刺さった!・・・しかし、なんというか手ごたえが湧かない。

「まさか、こいつは分身・・・?」


「馬鹿め・・・は本物だ!」

芥子河原のプロレス魂に文字通り火が付いていた。

肉を切らせて骨を断つ様に、捩じり込んだままの右腕を両手で捕獲して

柔道の様な崩し合いに突入。

村田は必死に炎のエネルギーで振り払おうとするが

炎の魔術を会得してる芥子河原にとってそれは大したダメージではない。

最初からこの試合は格闘戦だったのだ。


「芥子河原!延髄へ強烈なエルボーの連打!人間の格闘技では反則だが

 悪魔的にはセーフ!」


「ぐあっ・・・!?」


「オラオラオラオラオラァ!」

クリンチした状態で膝蹴りの連打を叩きつける芥子河原。

力の抜けた村田を前から抱え込む様にクラッチして

一気にフィニッシュへのボルテージを高めていく。


「往生せんでいいから、精進するんだぜ?」



爆発魔法を付与した急降下パワーボムにより轟音を上げるフィールド。

地面に突き刺さった村田は黒焦げになってノックアウトされ

芥子河原の次の試合への進出が決まった。


「あー、痛い痛い!お腹殴られたもォォん!」


試合ではアドレナリンとテンションで誤魔化していたが

バックステージでは泣き言ばっかり言う悪魔であった・・・





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る