悪魔の幼児退行:Devil won't cry

まったく、降魔フリマアプリ大手のデビカリには

人間に使ってはならん劇薬が蔓延しておるわ!

久々に俺様こと芥子河原ヴェンデッタ悟:10万33歳(万年彼女募集中)が主人公だぜ。そう、あれは忘れもしない、鼻骨をへし折りたいぐらいの鼻づまりに苦しめられ

悪魔のサガで押収ブツを拾い食いしたのが事件の顛末である。



ヨミサカクリーナーズはなかなかに優秀だ。

悪魔探偵事務所やコミュニティの伝手に頼る事なく情報収集・・・

小悪党相手ならうちの血の気の多い衆とタッグを組んでサクサク事は運び

商品を無傷で回収してしまうのはお手の物!

戦闘大好き悪魔の師宮しのみやにやらせると押収したブツに傷が付くのが

タマに疵。戦闘も静かに出来る方では無いので奇襲向きでは無いのだな・・・


今回は珍しく反抗的で血の気の多い魔獣が番犬役を務めており

そちらは綾さんがよく切れるサムライソードで刺身にしてくれた。

お刺身にされたと言っても回転寿司には出せないがな・・・

あれだけ三枚おろしにしておけば元締めはビビッて悪い商売は出来まいよ?


「ほれ、例の商品。この瓶なんだけど、いくらで売れんの?」


「涼くん曰くイケないモノだから売っちゃいけないんで・・・

 監視者さんに提出ですよ。報酬は頂けますから」


「もしかして媚薬ってヤツ!?どうするよ結ちゃん。

 そういうの興味あったりしない?」


「いえ、ストレス社会で疲れ果てた人が・・・

 幼児退行すると言う振れこみなんです。」


「・・・それは需要があるから売れてんだよな?」


「そういう事になります。効果は一時的なモノで

 依存性はありませんがストレスから逃げられるのが病みつきになる。

 それを利用して赤ちゃんにされたりする・・・特殊なアレです」


そこに芥子河原が事務所に戻ってくる。


「あー。今日は毒物が足らんぜ!」

地球の人間が言わないフレーズ第3位ぐらいの台詞を愚痴りながら欠伸を出す。

見た目が栄養ドリンクに見えるそれを無警戒で手に取り

グイッと行ってしまう。

結と綾がリアクションする前に自然に飲んでしまっていた。


女性陣二人はそこで色々な想像が働く。

「仮にも大人の男性が甘えん坊になったら・・・」


「心の準備・・・覚悟決めろォ!」


言葉にしてはいないが、二人は目線で会話する。

こういう形の緊急事態は流石に初めてだし

あまり異性として意識しないようにしてきた女の紳士協定・・・

「ここは説明しなかった責任を取るべきでは?」


「とりあえず、日頃辛いとか言われて泣くかも知れねえ!

 ってか何歳まで戻るんだオイ!?」


「ふ・・・ふぇ・・・」

眼がウルウルして、肩を震わせる芥子河原。


「あぁ・・・大丈夫ですよ泣かないで下さい・・・」

介抱しようと歩み寄る結であったが・・・


「ふぃ・・・ふぃっくしょん!・・・あぁーこれ退行薬かよ?

 俺様にとっては鼻づまり解消の薬でしかないな?」


唖然とする悪魔探偵(24歳)と元魔法剣士(28歳)。


「え?この効果嘘なの?」


「何を言うか結ちゃん、俺の年齢を知ってるか?」


「あ・・・」


さすがに10万とんで33歳の悪魔を赤ん坊にするほどの劇薬では無いので

10万と3歳ぐらいまで若返ったものの見た目は代わりの無い芥子河原。

しかし、魔界が恋しくなってデビルセンチメンタルに陥り

少しホームシックになる悪魔なのであった・・・

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