悪魔の包囲網vs悪意の魍魎
その頃、結界と芥子河原の
完全に封鎖された一帯は周囲と隔絶された異空間と化す。
「全く、みんな金儲け好きなんだなァコイツら・・・」
悪人とはいえ力ない奴らを始末する程、悪魔探偵たちも鬼ではない。
結界の外に出たくてヒーヒーうるさい悪人どもは綾と師宮が
優しい暴力(当社比)で昏倒させる。後で掃除屋の子に片付けて貰うが・・・
「涼はもう中の方まで言ったのか?」
「あぁ、例のエネルギーが漂う方へ行ったぞ。」
「あたしら、結界の維持で助けにいけねえからなぁ」
「確かに荷が重すぎるッ!」
ピカピカした顔で悲観的な事を言う准一。
「ほんと正直だよなお前」
綾は結界の解れが無いように確かめながらも呆れていた。
悪魔の力を身に着けた涼の感覚が鋭敏になるスキルで辺りを慎重に探索する。
すると、今回の悪党は下級悪魔が呼び寄せた魔獣が含まれていたらしく
ドアを開けるとバッタリそいつと遭遇してしまう。
距離をとってオルタギアV-RABEに変身する涼。
その感覚スキルは夜中の真っ暗な建物の中でも関係なく敵を見つけ
「ダァッ!」強烈な右の回し蹴りで狼男みたいな魔獣の腹を抉り
怯んだ所に容赦なく左の膝蹴りを顎に叩き込み
魔力を込めた攻撃で消滅させる。
バリアスーツを介していつもより素早く動ける事を感じ取る涼。
腕力も人間態でいる時とは段違いになっており
立ち塞がる10体の魔獣をそれぞれ二撃かそこらで薙ぎ払った。
同時に悪魔的闘争本能が昂ってそれに飲み込まれそうになる。
こういう事を望んでたのだと思い知らされる
その頃、
激戦を繰り広げていた。
単純な力押しを技で受け流すと行った流れが何度も繰り返され
次第にオルタギア:戦鬼は窮地に瀕している状況だった。
そこに涼が辿り着く。
「これは・・・どういう・・・!?」
「おやおや、オルタギアのお友達がもう一人・・・でもキミは少し違うようだ」
「佐藤さん!事情は聴いています!下がっててください!」
こうしてV-RABEと懺業のバトルが始まるが・・・
アブソリュート空手の技術が飛躍した身体能力に追い付かない。
しかし、懺業が展開した電磁障壁を破る為にはひたすら攻撃するしかない。
心臓が弾ける様なぐらい興奮している自分、闘争に快楽を見出している自分。
涼は戦いながら悪魔の誘惑にも似た快楽のせいで肉体のダメージを無視してしまうほどだった。
「やはり、悪魔の
懺業のエネルギーを込めた貫き手がボロボロのV-RABEの胸部へと突き刺さる。
「・・・!?」
自分の心臓の音がこんなに大きい音で聞こえるんだろうか?
死んじゃうのか・・・?力が抜けていく涼。すっかり項垂れてしまった
「困るねぇ。オルタギアも適合者も高級品なんだから、無駄遣いされちゃぁ・・・」
しかし、項垂れていた涼は眼の光を変えて顔を上げ再び活動を開始する。
「グォォォォ!!!!」猛獣の肺活量特有の咆哮の様だった。
驚いて距離を取る懺業。しかしそれを逃がさない様に
オルタギアが膨張、破損した箇所を彼に根付く悪魔:アスタロトが再構成して
一気に高速移動して迫る。
暴走を開始した涼は黒い煙の様なオーラを出しながら力を高めていった。
場所は屋内から屋外へと移り、悪魔時空展開で異空間になってるとはいえ
こんな激しい戦闘は結界の維持を担う芥子河原も見た事が無い。
「ヤベーぞ・・・俺が持ち場から離れたら悪魔時空が解けるんで街が滅茶苦茶になるぜ!」
猛獣が襲い掛かる様な取っ組み合いの末、どちらかが上になり
どちらかが殴る泥臭い攻防が続く。V-RABEを纏う真っ黒なオーラが
より色濃くなっていった。涼は強化された感覚によって
触れた懺業の心が触れる度に垣間見えては
「他人の悪意に付け込み、利用する」ただそれしか考えてない残忍さに
怒りを覚えていた。
「人間は不思議と隕石の衝突も災害も恐れない。
その代わり他人の悪意こそ最も恐れてるのさ!分かるかい?これが人間だよ!」
結界の端までおいやられ、触れたら身を焦がされるそれにふと視線を見やる懺業。
「とは言っても、今のキミは単なる異形の化け物だな。」
「!!」
刹那・・・涼が放った怒りと魔力の全てを込めた右ストレートをギリギリで
涼の拳は空間を歪め、浸食し、結界の壁を縦横3mずつ破壊してしまう。
「短気は損だねぇ。」
懺業は残っていた力で結界の穴から離脱。涼は暴走の反動で
身体中に激痛が走り、意識が遠のくほど動けない状態になってしまった。
しばらくして、メンバーが駆け寄る。
「狙ってた闇のブローカーはブッ捕まえた!結果オーライだ涼!」
「しかし、何重にも構えた結界を壊す涼くんのパワーって・・・」
「すいません。僕のせいで。」
「気にすんなよ。あっちの悪魔ちゃんを見てみろ。」
その頃、悪魔時空展開を終えて一安心していた芥子河原は
昼間に遭遇した海老道楽のギミックに魅了され再び首を挟まれて
悪戦苦闘していた・・・
そこに現れる彼を運んできた前野と後藤がやってくる
「あの人、ウチの担当なんですけど、助けます?」
「あっ。我々が片付けますから今日はお休みになってください!」
「どうもー。」
涼の謎の力はさておいて、芥子河原はまた首を外して帰るまで放置される事となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます