魔界からのドジっ子暗殺者:戦いは突然に

「フフハーハハハ!」

師宮しのみや・ヴォルテ・准一じゅんいちは特に理由もなく笑う男であった。

荒事専門として容赦なく、それでいて痕跡を残さぬ

確かな仕事っぷりの元で悪魔探偵・今際野結イマワノユイに従い

その日は特に何にもなく仕事も無しで

帰路に着こうとしていたある日のこと。爬虫類の様な目で眼前を見据えて

今日の晩御飯を何にしようかと考えていたが・・・


ズギャァン


半歩気付くのが遅れていたらその禍々しいダガーナイフの餌食にされていただろう。

それは地面に突き刺さり、大きなヒビを入れた。

こんな無駄のない襲撃を仕掛けてくるのは・・・

魔界より送られし暗殺隊アサシンズ

羽織ってる黒い布から瞳が光り、続けざまに斬撃、突きが飛ぶ。


「こっちで罪を重ねた覚えはないぞ!名乗れィ!」


悪魔の掟においては現世送りにされたら己の身は自力救済。

つまり抵抗しまくってもいいのだ。

魔剣・ティルヴィングを手元に召喚して

雷光がはじけ飛んだ瞬間に強大な魔力がブーストされるが・・・


「あっ、もしかして悪魔ヒト違いでしたかァ!?」


気の抜けた女の子の声である。躍動感のある動きの割りに

何とも腑抜けた・・・人間で言うとまだ未成年ぐらいの女の子の悪魔。

手の甲に暗殺隊アサシンズの刻印がある以上

プロの殺し屋である事には間違い無いのだが・・・


悪魔ヒト違いだと!?何たる無礼な!?」


「すいませんすいません!予定してた相手だと思ってたんで・・・」


「この街に悪魔なんぞ山ほどいるわ!暗殺隊アサシンズがそんなんでどうする!?」


「えぇー!?そんなにいないと思ってたからあなただと思ったんですゥー!」


早とちりで殺されかけたのはさておいて

戦う悪魔がこうやって捲し立てられて涙目になってるのが

師宮としては見るに堪えなかった。


「すいませんこの落とし前は今すぐに・・・暗殺隊アサシンズ失格ですゥ」


アサシンズのケジメは刻印の刻まれた手指を斬り落とす事である。

悪魔の肉体は再生こそするが、刻印は呪いの証。

その部位は再生しない決まりになっており

失敗した者は罰として指の一本や二本落とす血の掟があるのだ。


「目的があるのであろう!?まだお前の任務は失敗ではなァいッ!!

 若いんだからお体を粗末にしてはならぬっ!」


「ヒーっ!?怒ってるんですか?フォローして下さってるんですかぁ?」


芥子河原達は慣れているが、とにかく師宮の喋り方は圧があるのだった。


「とにかくここでは目立つ!作戦を練り直すぞ!」


彼のガッシリとした手に引き寄せられた時に

不思議とこの人は敵では無いと分かった。その安心感からか・・・


グゥゥゥゥゥ・・・


「・・・腹が減っているようだな?」


「こっちに来てから2日何も食べてないんですすいません・・・」


「ところで、名前は!?俺は師宮・ヴォルテ・准一だ!」


「・・・土岐とき・ヴェルデューゴ・はるかです」


何故か戦闘悪魔はナチュラルに彼女の任務とやらに首を突っ込んでいた



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