在りし日のナイトメア・今際野結のタイムリープ

有耶舞村うやまいむら・・・廃村になって地図から消えた場所。

かつて土着信仰の儀式で悪魔を降ろし、壊滅した村。

記録上は火災で焼失したと言われている。


神代涼カミシロリョウ・・・そこから悪魔として転生した少年。

人間年齢は17歳であるが、それは研究機関に肉体を凍結され

時間を止められたせいでもあった。


今際野結イマワノユイ・・・ある日、存在しない電話番号からの通報を受けて

現場に向かった警察官。


あの時に何があったのか。直近の管轄に入電が来た時に

畦道を自転車で駆け抜ける結が居た。


「えーっと?この辺って・・・もぬけの殻の土地じゃ・・・」


既にそこは廃村であった。誰も居ない筈であった。

しかし、赤い月が不気味に上弦を向く頃に平成と対照的な昭和の風景。

子供の頃にニュースで見たステレオタイプな昭和の日本・・・


急に人が居る村へと移り変わる。巡査として配置されてる以上

今は携帯電話を持っていない。だから日付が分からない・・・

だけれども時計は不自然に針が逆回転していた。

信じたくないが、オカルトとかそういう類の怪異。


悪い夢を見てる時特有のありのままを映し出して

その状況に抗えない感覚。どうして?何で?と言う感情がない。

だけど、身体が汗ばむ感覚、そして明滅する様に移り変わる場面。

きっと、連日の疲れの悪夢だろう。そう思ってた頃に


「あぁ嗚呼ァ亜ァ阿ァ!?」

人間のそれではない、雄たけびの様な声と共に異形の怪物が現れる。

何故悪夢で怪物から逃げる時には脚が重たいのか?

だけど、必死に走ってる時の風を切る体温の低下

上がって行く心拍数。もはや抵抗する意思すら湧かない中で


必死に民家の中へ逃げ込む。


すると、カレンダーが目に入った。

「昭和62年・・・8月?」


自分はまだ産まれていない。脳からあるだけの情報、選択肢だけが

ひたすらにポップアップする。

もちろん正解なんて無い・・・


「・・・何で?」


その疑問符だけが脳内を占有した時に

未だこれが悪夢だと信じていたい自分が居た。


ズドンッ

一気に血圧が下がって行った。経験した事が無いが

これは大出血の感覚。頭に穴が開く痛みが一瞬だけ脳をつんざいて・・・


気が付いたら川に流されていった。死んだ祖父とかそういう、彼岸の人達。

何故?もはや夢では無い。廃村に入り込んだらタイムスリップして

そこで殺されてしまったのだ。誰ともつかない説明に説得される。

だけれども川の流れから浮かび上がると水に濡れた感覚が消え失せ

穴が開いた頭蓋も元に戻って・・・此岸しがん。つまり現世へと戻される。


鈴虫の泣く声。廃村の手前で倒れ込んでいた結は

連絡が途絶えていたこともあって、仲間の警官に保護されていた。

報告書には何と書けばいいのか?


ただ、今は存在しない電話番号から通報があって

そこに行ったら廃村が蘇り、異形の化け物が闊歩する世界になっていて

奇妙な体験をした。彼女の夢には何度もそいつが現れる。


都市伝説が散逸していく間に整合性が作られて

ハイブリッドな怪談として完成していく中で

実際にあった出来事と言うのは消え去って行く。


結は怪異と出逢った時に一度死んで、黄泉還りを果たし

現世へ戻ることが出来たが、それ故に現実と乖離かいりした様な

変なヤツと言うレッテルを張られ、表の世界で生き辛くなり

悪魔探偵として監視者に雇用される様になったのだった・・・


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