違法少女etc・芹沢綾の更生

芥子河原とか師宮の様な悪魔達を狩るのが魔法少女の本来の目的だった筈。

ところが現世の人間関係の方が大概地獄なのと時間の流れと

いずれ人は死ぬと言う絶対的なイベントからは逃れられない。


思春期を殺して妹にも死なれ、ようやく成仏させた芹沢綾。

これまでやってきた事は悪魔や怪異をバッタバッタと斬り落とし

全てゴールの無い戦い・・・奇を衒った結果なのか宿命なのか

そんな事はどうでも良い。あるのは不平等な現実だけなのだから

ボロボロになって死んでいった方が楽だと

何度思ったか分かったモノではないが

それを打ち明ける相手なんていないと思っていた。


だけども孤独である事で自分を肯定して、せめて自分が傷つかない様に

誰の言う事も聞かないと言うスレた精神も

今際野探偵事務所に出入りしてから変わって言った。

と言うより心を閉ざしていた時間も徒労だったと気付かされる。


「芹沢!魔法少女時代はどういった戦闘服だったのだ!?」


相変わらず目力と声の張り方が凄まじい師宮しのみやは彼女の戦闘力の高さ・・・

人間にしてはとてつもなく強い方なので、何でもかんでも聞きたがる。


「今着たら・・・キツい。」

もうこのテンション高いヤツにも慣れた。悪魔の癖に

悪いヤツでは無いせいなのか・・・


「それはサイz・・・ムググー」


野暮な事を聞こうとすると芥子河原けしがわらがヘッドロックで制する。


「馬鹿野郎。それは20代超えたら魔法少女というのはキツイからd」


ボグシャッ


芥子河原の顔面に綾の靴底がめり込む前蹴りが叩き込まれる。

「お前も何気にデリカシー無いなぁ」


「ふんぬらばー!鼻ァ・・・どこ・・・ここ?」


「今日も元気ですねぇ。今日はお給料日でーす!来月も頑張りましょう!」

この背後から気配を消して現れた今際野結と言う悪魔探偵・・・

うちの社長さんは一度死にかけてあの世を拝んで

黄泉還りを果たし、監視者とか言う本当は何でもできる疑惑のある

謎の女に使役されている。人間枠ではあるが、時折爬虫類の目になってると言うか

心を見透かされてる様な感覚に陥る。

まぁ何か特別な能力を持ってる人間じゃなくても

生きてる人間はみんな恐ろしいモノに変わるのがこの世界。

一度あの世を観て来たヤツがそれよりヤバいヤツになってても

あんまり驚かないのが実情だったりもする。


「あれ?そういえば神代くんは?」


「アイツなら異空間の此岸役所しがんやくしょで高認試験と運転免許の同時取得!

 既に運転免許の取れるトコまで差し当たって居るぞ!」


「まぁ人間界で公文書に書き換えられる代物だ・・・ヤバい鼻骨ブヨブヨに折れた」


最近観ないと思ったら・・・一番まともな年下の男子は

なんやかんやで人間の社会から隔絶されたから

一度そうなった者は自分でどうにかしようにも

何か、勝手に落ちこぼれた何かみたいになって・・・

たぶん同じ境遇だったら詰んだと思うだろう。

それは自分でそう思ってるだけなのか、みんな同じ悩みを抱えているのか

ハッキリ言って散って行った友達の話をすれば長くなる。

孤独から抜け出したら、失った時間にどうしても未練が付き纏う。

人は綿でも首が締まるとかどこかの作家が言ってた気がするけど

10万年とか生きてる悪魔達がこんなアホみたいに生きてる様子を見ると

結局は生き方は自分で決めてるモンだし、過去を呪う必要なんてない・・・

ただ、楽しく在りたいなら楽しく生きる事に執着する。それだけの事なんだ。


そんな事を考えながら・・・

「結ちゃーん。この後、飯行く?」


自分で言うのもアレかも知れないけど

言葉がいつの間にか明るくなった。こんな自分にも友達が出来て

いつの間にか笑顔で居られる時間が増えた。

過去は変えられない。だけど未来は変えられる。

だからこそ違法少女として暗躍していた芹沢綾は

悪魔探偵達とつるんで、しょうもない日常を楽しめるようになっていった。




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