悪魔の現世送り・地獄から来た男

エイリアンっぽいと言うかエイリアンを狩りまくる害獣駆除も楽じゃねーな。

地上の人間達は宇宙人なんてオカルトだと言うけど

魔界の情報が転生悪魔達によって現世に送られると

金になるからと言って低予算ながら超大作のモンスターパニック映画が出てくる。

物理的な侵略よりも創作の方が誰も傷つかないからな。

サメがあれこれ飛び回る映画は悪魔も舌を巻く人類達のオリジナルムーブだが

子供達のトラウマになる様なグロ映画は悪魔の手引きだったりするのだな。


別のチームが溶接で退路塞いじゃったりしてる日には

マップ書き換えのデータを確保しておかないと・・・

みんなこういう地味な仕事をやりたがらない。

この刑務所は破損と増改築を繰り返した結果としてダンジョンの様になってるけど

正確に記録していくにつれて刑務官からは「忘れろ」と念を押される。


飯を食いたいからと言うそれだけの理由のためだけに戦う俺。

ヘタすると刑務所の方がバトル要素強いな。

普段は技術系でやってるから、本当に脳筋の悪魔達とチーム組まされて

害獣の巣に放り込まれるといよいよ自分がリーダーシップとらないといけない。

俺が居ないとみんな突っ込んで囲まれて死ぬのである。

人類よ。引き際には気を付けろ!


シャバでは未知の領域へとアクセスする為の冒険をしてたけど

閉鎖空間で人体の免疫細胞が必死こいて戦う様な

シリアス過ぎる攻防の果てに、クイーンの巣へと辿り着く。

泣けるぐらいのやり込み要素だな。


ここまで来た時に限って物資が無いのが一番しんどい。

我先にと害獣達をハチの巣にしていっていくと言う意思だけは共通してるんで

囚人悪魔達のチームプレイは俺の嫌いな体育会系テイストだ。

個人競技は好きだけどチームプレイはどうしても苦手だぜ。


普通は物資が尽きて来た頃合いになったら殿しんがりが報告するのだが

前衛が弾をバラ撒いてる間にケツの方ではその殿しんがりクンが

ものの見事にエイリアンのオヤツ。

エイリアンvs悪魔とか勝手に戦えと言うキャッチコピーが付きそうだが

ここで死んだ悪魔は知らない世界に無一文で放り出される。

負け犬の悪魔として・・・


クラフト技術は健在なので、名も無き死んだ懲役太郎くんの物資を継ぎはぎすれば

それなりに活路を見出せる。悪いが爆弾を拵えてマップを書き換える事にするぜ。

なんでこんな事出来るのに脱獄しないかって?

帰った時の飯が凄まじく美味いのだ。正月には外でも食えない巨大な蟹を

山分けしても足りないくらい食わせてもらえる。

「生かさず殺さず」って生かす方に寄ってると悪魔ですら従順になるのだな・・・

10万年以上あれこれやって生きてる悪魔にとって懲役2年とはちょっとした

新しいテレビゲームをやる様なモンなのであった。


ただ、人間界へ行く為に加算される銭を稼いで

新たな人生をスタートしなきゃいけないから必死こくワケで

そういう意味ではこれが試練だったり転機だったりするのだ。

ステータス無い頃のエイリアンとの戦闘はまさしく

地獄絵図だっただろうけど臆病だから、神経質だから生き延びられたと実感する。

いつか言ったかもしれないが芥子河原の血は高濃度のモルヒネ的成分を含む為

多少エイリアンに齧られても卒倒して倒れるのだった。血が足りないとしんどいから

あんまりこのやり方は使いたくないぜ。


「出撃、10名!帰還、7名!」


「よし!」


よしじゃねーけど、これは人体で言う白血球と癌細胞の争いみたいなモノ。

死んでった仲間を思うのであれば忘れてはならないと言う事だな・・・

今まで破壊の限り生きて来たけどこの戦いを通じて

生きるとか死ぬとか色んな事を考えさせられる俺なのだった。


刑務官には帰って来られなかった懲役くんのタグの控えを提出して

武器を返却する。薬室を開けて弾が入っていない事を証明し

作ったアイテムも返却する。今回作った爆弾等を溜め込んでおけば

卵を産んでるクイーンを丸焦げに出来るのになぁなんて

チラチラ刑務官に視線送っても怒られるのが目に見えている。

要するにある程度隔離区域に害獣が湧けば仕事が湧いてくるのだ。

奴らとは生かさず殺さずの攻防を繰り広げるのだな・・・

居住区域と隔離区域の安全は確保されているが

物事に絶対は無い為、持ち物検査はいつにも増して

神経を尖らせていたのだった・・・


こんなくだらないバトルで男達は逞しくなって行き

俺もそれなりに経験値を取り戻す。

やがて、出所の時を迎え、俺は現世にブチ込まれる。


もっと良い方法とか無いのかなぁ。脳細胞の景色が浮かぶと

それが自分の中身。悪さしかしてこなかった悪魔にとっての宇宙そのもの。

電気椅子に固定されて特殊な磁場を発生させられ俺は転送される。

デビル流刑と聞いてたけど実質デビル死刑なのでは?悪魔は訝しんだが

タイムマシンが出てくる映画みたいに俺は時空の奥へと押し込められる。


スーパーヒーロー着地したかったけど膝に来るから辞めといたぜ。

202X年の日本、物理的な争いだけでは無い何かが渦巻いているこの複雑な世界に

悪魔は戸惑い続け、現在に至るのであった・・・


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