魔界の刑務所

たまには昔の話をしよう・・・


現代社会と言うのは何でも地獄に例えがちだが

地獄を知らぬ生けとし生ける者に地獄を語る資格など無い。

神を崇め過ぎる様に人は地獄を過信し過ぎている。

人類よ。ありもしない最悪を押し付ける奴らに気を付けろ!

人間の敵は7割ぐらい生きてる人間だったりするのだ・・・


なにせ悪魔とか霊障の類は現世に干渉するのを由とされず

少なくとも歴史に関わる事はあんまりやっていない。

たまにムカついたヤツの尻にバレぬ様に正正丁(アレ十二回分)

とか寝てる間に落書きする程度である。俺様はそんな事しないけどな。

現世に舞い降りた悪魔はだいたい人間よりも頑丈な肉体を持っているので

せいぜいまたあの世に逝くまでにその時代の美味しいモノや

ムフフな事をバレない程度に嗜んで人並みの消費者として生きるのだ。


しかしながら、地獄から現世送りにされるのがデビル流刑・・・

こっちでは「そんな事で」と想うかも知れないが

悪魔は価値観が人間と少しではあるが大幅にズレていて

現世で稀によくある事で魔界の刑務所にぶち込まれ

懲役で済んでヒャッハーライフに帰る者も居れば

世知辛いこの世に馴染む為に人間っぽくなっちまうと言った

恐怖の刑罰が待っているのだ・・・おかげで俺様もかなり丸くなっちまったぜ。


弟のチョコレートを盗み食いしたある日の事。

それには悪魔をギラギラにさせるトンデモ成分が含まれていて

俺は完全にいつもと違う欲望が抑えきれなくなった。

人類よ。食い物には気を付けろ!!

地獄のオーシャンを泳ぎ回ってた頃の俺。それは赤い月の陰るぬるま湯の様なトコ。

悪魔は水泳が苦手なので、そんな事をしてる奴はだいたい密漁なのだな・・・

地獄のイセエビを銛で突いてとったどー!して雄たけび上げたら


「そこの悪魔、止まりなさい!」と警察に呼び止められて

まずは所持品検査とは名ばかりの魔術排除スキルパージ。俺様は戦えなくなる。

悪魔は甲殻類が大好きで、動物の発情期の如くと言ったらアレだが

モノを見つけると衝動を抑えきれない。まるで大数の法則の如く

1千人の悪魔が居たら1人ぐらいは懲役太郎になっちまう。


それにしても暇だなぁ。留置場から裁判までの間に俺の刑罰は決まってるが

ある程度、人間界の世知辛さを教え込まれるんで

そういった予習を兼ねて魔界の刑務所が存在するのだ。

少なくとも人間の世界で大量ジェノサイドした日には

この宇宙の塵に転生できるかどうかも怪しいし

そういえば何でこの世界の若者が好む異世界転生モノのアニメ小説って

ちゃんと人間に生まれ変われるんだろう?意外と神の方が無慈悲なんだがな・・・


悪魔の身柄を現世に移されるだけと言う概念は人間からすれば迷惑だろうが

フロムヘルな我々にとってはなかなかに気を遣うし、悪魔バレはしたくないし

他の良く分からない転生悪魔に狙われたくも無い。


そんな事を考えて10万と30歳児だった頃の俺様は獣が嗤う巨大な監獄・・・

とは名ばかりの、単純に人間臭いと言う概念を叩き込まれるだけの

知らない野郎共と同じ天井を見上げて寝る生活へと身を投じる事になる。


俺の罪名なんだっけ・・・

あっ、そうだ。あの時の俺はどうかしていて

魔界の砂浜を時速30km/hで蟹歩きして豊漁の儀式を行って

歩行速度違反(若い悪魔は本気で走れば時速120km/h出るけどそんなに若くない)

前述の地獄イセエビ密漁と漁業法違反・・・それらが何やらかんやら

あっ、そうだ。見つかった時に素直に降参したのも罪に問われてたんだった。

「悪魔ならもっと抵抗しろよ。そんなの人間みたいじゃないか?」


だって弟から盗み食いしたチョコの効果が切れてどちらかと言うと憂鬱なのだ。


魔界の警察は血に飢えた悪魔を好むが俺様はお楽しみタイムを邪魔されて

ションボリしちまった・・・警察の点数の為に抵抗しなかった罪も含まれるが

初犯と言うこれまた珍しいケースなので放免になったぜ!

(親父は若いころ時速100km/hで煽り蟹歩きをした罪等で前科10犯ぐらいある)


そして裁判を前にして人間界から堕ちて来た・・・

地獄にワンサカと居る弁護士ガチャポンを引き当てる。

あいつら、地獄でもなかなかの悪徳弁護士やってるぜ?

そして10万年以上生きてる俺様に課せられた懲役は2年とそこら。

こういったストーリーが俺様を人間臭くしていく過去編の序章である・・・

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