悪魔と平等なる死神

人は二度死ぬ。物理的に死ぬ事。忘れられて存在が死ぬ事。

お前は死を何だと思っている?

この世界では平等と言う概念が不平等に散逸している。だから矛盾する。

だが死だけは必ず平等に万人の傍に居る。なぜならば己の心は死神なのだ。

時に運命を開く伴侶になるときもあるし、弱った精神が悲鳴を上げると

肉体が危険信号を出して手辺り次第に周りを攻撃する。

そこまで行けばもはや死んでいるのと一緒なのだな。


確かに誰かのせいで嫌な事に巻き込まれたりはする。

だからと言って自分で考える事を辞めたりはするな。

戦争じゃなくたって生存とは闘争なのだ。

平和なのは良い事だが、静かに眠れない者達の嘆きは

俺様がwifiのように感じ取れちまう。

現代人は劣等感と焦燥感に悩まされている様だな。

どのみちお前がやる活動は「生きる」と言うテーマの追求だ。

必然性のある行動を選び続けるしかない。


今日はちょっとしたお祓いである。

芹沢綾さんの妹さんの芹沢藍さんは死霊となって姉に襲い掛かったが

結ちゃんの力で浄化され、どうにかヘヴンへと旅立ってくれた。

最期の依り代は彼女が現世に遺した刀であるが・・・


「悪魔ちゃん。これって呪いが残ってるとかそういうのあるのかな?」


「死者の未練にロクなモノは無いが、憑き物は戦って祓う。リボ祓いだ。」


「借りを借りで祓うってか?死ぬまで祓わないといけないか・・・」


元々、人には生きたい。悩みも無く生活したいと言う重圧が圧し掛かっている。

それは本人の身体一つ分そこらの重圧なのだが健康なら軽々と生きていられる。

だがいずれ身体にガタが来ると神経が凝り固まり生き辛くなる。

だとしても、己に嘘を課していく。まだ大丈夫だ、病気じゃないから。

そう。最悪と言う状況に陥る事にはずっと目を背けるのが人間の性である。

だって、本当に落ちていく時は大きな波に逆らえず

あっという間に流されていくんだから自分を騙して生きている。


芹沢綾は悲しみの果てまで戦う。いくら死の刃が迫ろうとも

ずっと目を逸らさないで潜り抜けて来た。

だからと言ってそんな焦燥感を快楽と言い張って強がれる訳でも無い

どこまでも人間らしい人間・・・


「決めた。この子の分も背負っていくわ」


二つの長物の刀を携えてバッグに詰め込む綾。

妹が見ることが出来なかった希望とか未来とかそういうの・・・

面接の動機じゃないんだから、生きる事の動機なんて曖昧で良い。


背負うとかそういうのではなく、今、強さが欲しい。

誰もが孤独を恐れるが、誰と居ようが本来孤独である。

動物はプライバシーの塊。心の奥底まで繋がる事が出来ないのだ。


各々の部屋を持ち、何を隠し持っているか分からない。

そんな世界で誰かを信用して生きていくのはハッキリ言って難しいことだろう。

ただ、悲しみの雨を共に駆け抜ける者が現れたとしたら

彼らこそ本当に信頼に値する者だろうと思う。

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