違法少女:Fatal Fight

デビルPCの座標が示していたのは

羽佐間製薬の工場跡地として今は廃墟になっている場所だった。


都会の喧騒から30分ぐらい歩くと辿り着く。

だが誰の目にも止まらない様な場所。


芹沢綾は一人で向かっていった。


「ヴェっさん。綾さんに何かあったら・・・」


「生きてれば回収する。」


「そんな無責任な・・・!」


「あの調子だと殺しても死なねえが・・・相手はおそらく死霊だ。」


「それなら・・・」


悪魔は現代の女心など理解していない。

そういう時は機械的に事実関係で詰めていくしかないのだ。


綾はドガァン!と入口を蹴り飛ばすと

無機質でひび割れた廃墟・・・

エントランスホールで立ち止まる。


「いるのは分かってんだ。来いよ。」


するとむくろを纏った想像種イマジナリーが死角から飛び出す。

「遅ェよ。」


あっという間に身を翻し

拳銃がの後頭部へと突き付けられ

容赦なく銃弾が頭蓋を砕く


まだ複数体居たが、拳銃と刀で次々と倒して行って

辺り一面血の海と化す。血と硝煙の匂いはいつぶりだろうか?


「おい。ゴミ掃除は済んだぞ?」


すると奥から一人の女が立ちふさがる。


違法少女として闇に暗躍する芹沢藍・・・

彼女の妹であるが未練を残した死霊として

この廃墟に巣食っていたらしい。


「あの時にくたばってまだ未練あるってか!?」


「だってお姉ちゃんはこれぐらい食べないと不満だと思ったもの。」


「私は人食いじゃねえっつの」


成立してるようでしてない会話のドッジボール。



お互いの虚ろで赤い眼の瞳孔が爬虫類の様に収縮する。


刹那、お互いの刀がぶつかり合い、衝撃で周辺のコンクリートが少し崩れる。


薙ぎ払いを主体とする藍、突きを多用する綾。


殺意の入り交じった金属音が何度も不協和音を奏でる。


「・・・はぁ・・・っ」

まるで戦闘に快楽を見出す様に喘ぐ藍。

この寒気は綾にとって久しぶりだった。

魔法少女になって目指す筈だった平和を

藍は由とせず、戦闘に快楽を求めて

違法少女となってしまったのだ。

だからこそ肉親であろうと彼女を滅しなくてはならない。

その未練ごと・・・


「あなたこそ、血に飢えた獣の目・・・」


「うるせえ!」


どうしてこうなったのかがフラッシュバックする。

だが、言葉には出来ない程の情報量だ。


綾にとって一回死にかけたと言うのは妹との死闘で

重傷を負った過去があるからである。

繋ぎ留められなかった姉妹の絆・・・

その罪悪感。それらがオーバーラップするが

その間に魔力が交差し、弾き飛ばされる。


「もうすぐ気持ちよくなれるよ。お姉ちゃん」


「ふざけんな。」

最大魔力での突きを叩き込むがやはり薙ぎ払われる。

しかし、それで十分だった。弾き飛ばされた反動で

遠くへ飛ぶがそれも戦略。


「リュウノアギト。」


隙を見計らって死霊と化した妹が

背後から忍び寄っていた悪魔探偵の手で浄化されていく。


決着と言えるのだろうか?

どうにか生き延びることが出来た。


「うっ・・・グァっ・・・」


これまで受けた魔力のダメージに浸食されて身体中に激痛が走る。


「やっぱり生きて帰って来たな。」


「悪魔ちゃん・・・」


「早く逃げましょう!ヴェっさん!デビルスキルでステルスを!」


「分かり。」


妹は孤独だった。孤独にさせてしまった。

あの最後の時間に許し合えたのだろうか?

それは自分があの子の分生きて知らないといけない。

体の痛みでは無い。心の痛みが綾の瞳から涙を零していた。

最期まで否定するぐらいなら、せめて浄化の余地がある間に

結が入り込めるぐらいの隙を作りリュウノアギトで葬る。


正攻法ではあるもののかなり苦肉の策であった。

そうでもしないと綾も連れていかれる。

悪魔の嫌な予感の正体はそれだけではない。

浄化の力を誇るリュウノアギトが死霊の力を吸収し続けると

持ち主の悪魔探偵の肉体が少しずつ人間のそれから遠ざかっていくのだ。


人は生きてる事が罪なのか?生きて罪を贖うのか?

死が救いなのか?ならば何故黄泉還り現象があるのか。

光るモノの全てが希望とは限らない。背後には必ず闇があるのだから・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る