サトゥルヌスの夢:切り札はこの手の中
悪魔にとって最大の快楽・・・フフフ。
そんなもの、お布団でアレをする事に決まっているであろう?
おっと?猥褻は一切ないぞ。俺の快楽は睡眠にこそある。
人類よ。出来るだけ睡眠に充てられる時間を誰かに握らせるな。
俺はお風呂に入ったら猫ちゃんの動画を鑑賞しながら寝るのが
ナイトルーティンなのだ。事務所に入り浸る時間も多いが
まだ借家に荷物を残していてたまに一人の時間を確保している。
そんなある日の夜の事。冷蔵庫でロブスターを腐らせてはいない事を確認して
眠っていると、ホラ、俺の
「目覚めよ・・・」
「寝てるから無理。」
「ちょっと!返事してるって事は起きてるって事でしょ!?」
「うるせーなー。寝てる時に時間外労働とか勘弁だぜ・・・」
サトゥルヌスとは農耕の神として存在する崇高な存在であるが
俺から見れば業火を使って焼畑農業するも
やり過ぎでいつかの戦争の焦土作戦になってしまう様なドジっ子女神なのだ。
「だいたいさぁ、そんな金掛かった甲冑みたいな風貌で
可愛い声で話しかけられても色気もクソもないんだよねー。」
「あんたねっ・・・!?ちょっとレベル高い中級悪魔だからって・・・」
まぁギスギスするのはこの辺にしておこう。
「で、何の用?海老アーマーになってくれてお世話でもしてくれんの?」
「あなた、武器の選定がまだでしょう?
仲間に恵まれてるからって無策過ぎなんじゃないの?」
「心配してくれてる?
「馬鹿ッ!宿主に死なれたら迷惑なだけなんだからねっ!」
「あ、ブリティッシュショートヘアだ・・・良い子だねー♪」
「ねぼけんじゃないわよ!?とにかく武器を・・・」
「武器か・・・言うほどそういうのって重要かね?」
俺はサトゥルヌスの装甲部分に手を当てる。
「ちょっと!何これ・・・!?」
「芥子・・・モルヒネの語源を知ってるか?・・・モルフェウス。
モーフィング・・・変容させるんだ。」
羽の様なモノまで生えてきて多種多様・・・
そう。手にしたものを己のデビった武器に変容させる。
既にこの肉体こそが全身凶器なのだ。
死ぬときはどうやっても一人。切り札は自分だけ。
それが芥子河原の家訓・・・
何をしてくるか分からない者が戦いにおいて
最も恐ろしい。だからこそ何にでもなれるように
中級悪魔の括りの中でも多様性を見据えて
進化を遂げて来たんだぜ。
俺は何者でもあるし何者でも無いのだ。
「それじゃあ、選定する武器は・・・」
「一つだけ頼めるか?」
「はい!」
「寝る時間を返せ」
俺は差別と眠りを妨げるモノが嫌いなのだ。
武器は己の肉体が作り出す可能性。
眠れなければ肉体は滅びる・・・
俺はサトゥルヌスを抱き締める。
俺の組みつきは魔界の熊も逃がさねえぜ?
芥子河原はサトゥルヌスと共に時空の狭間に雪崩式パイルドライバーで落下して
どうにか自分の睡眠時間を確保したのであった・・・
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