霊が如く:対決

師宮の家が近かったのでとりあえず避難。

同居人で悪魔の器でもある神代涼にも話を通しておく。

そんな事はさておいて

「アハハハハ!!」

何事も無かった様に漫画を読んで笑い転げる師宮。


「とまァ、死霊が異界を作ってコイツが巻き込まれたってんだが・・・

 切り替え速すぎだろ。いつもあんな感じなのか?」


「結構楽しいですよ。師宮さんと居るのは」


打ちっぱなしのコンクリートが味を出してるが

無駄にお洒落なインテリアの一軒家は

この馬鹿悪魔のチョイスなのか・・・

男のセンスは分からないな。


「それでね。涼くん。物は相談なんだけどさ。

 君、悪魔の力の一部で超能力使えるんだよね?」


「超感覚って言うみたいですけど。

 要するに能力が出れば見えない情報が読み取れる、みたいな」


とりあえずは人材の調達である。

一応今際野探偵事務所にも連絡を入れて・・・


あの自分から喋らない癖に舌は回る悪魔さんが電話に出てくる。

ここの家主の悪魔と悪魔探偵に飼われているあの男は

どうにも極端というか・・・慣れない。どうしてこの二人は仲良しなのか?

明らかに戦ってからすぐに漫画読んで笑ってる悪魔がおかしいのだろうけど

そもそも悪魔って何よって感じで・・・


するとスマホに着信が入る。ようやく会話になる結サマの登場。


「監視者さんからも聞いてます。その死霊さんは格が違うので

 下手すると危なかった様で・・・」


「危なかったヤツが今漫画読んで笑ってんだよ。」


「アハハハハハハ!!!ただし魔法は鼻から出る!?ヒーッ!」



「うっさい!電話してる時ぐらい静かにしてろ!」


「すいません綾さん・・・」


「いや、涼くんは可愛いから何しても許すわ・・・」


そんなこんなでちょっとした打ち合わせをする。


今際野結の浄化能力でも召されないタイプの怨霊であれば

自分と師宮で倒す。芥子河原は事務所のデビルPCで場所を特定する。

涼くんは超感覚で近辺の警戒・・・そんな感じだ。

とにかく他の被害者が出るまでに倒さなければならない。


師宮が巻き込まれたエリアの辺りまで行く。

「えーっと、痺れ生肉を芥子河原に喰わすって話をして・・・」


「アレ、悪魔の食い物なのかよ?食いそうだけど・・・」


すると涼が能力を発動させた途端に足を止める。

「この細い路地・・・さっき見かけた様な・・・」


「あっ!そうだ!悪魔の俺でも気づかぬ程に

 日常に融け込んだ異界だったな。」


「お前がアホなだけだろ・・・」


とりあえず涼くんの能力、超感覚で辺りの様子を伺う。

彼の耳にはあらゆる雑音や情報が濁流の様に入りこんで来る。


「・・・ッ!!」

まだアスタロトの力には慣れていない様だ。

それで居ながら、情報の源が見える。

自分が俯瞰で見えるんだ。


これは誰の目線・・・?


上から誰かが自分らを見下ろしている。


「あっ!上・・・!!」


すると、建物の壁を這うようにその姿がクッキリと現れる。


「おいでなすった!」


「やるか!」


二人の剣士が蛇女の死霊に立ち向かう為に構えるが・・・

そこに今際野結が間に合う。芥子河原のエスコートが上手く行った様だ。


「・・・ッ!?」


蛇女が怯んだように見えた。彼女が腕に纏っているリュウノアギト。

その手をかざすと、光の障壁の様なモノが構成される。


「召されますか?恨みますか?」


監視者と芥子河原に何を仕込まれてるかは知らないが

かなり場慣れしてるイメージ。


師宮と芹沢の二人にとって彼女は優しすぎる存在に見えた。

言葉が通じても、化け物を真っすぐ直視すると言うのは

困難な事なのだ。真っすぐ見る程自分が傷つくのが相場。

性善説の反対側がこの世界の掟みたいなモノである。


しかし、敵意ではなく、ようやく言葉を聞こうとしてくれた人間。

生前にこの世を恨んで蛇の死霊と契約した者に

ようやく、救済が訪れた。そう思ったのだが・・・

その気の緩みが完全なる死霊への完成のトリガーとなってしまった。

遂に蛇本体の怨念へ飲み込まれて暴れ出す。


また素早く動かれる前に・・・師宮は魔改装甲シェディムギアのデビルスキル

「雷光の矢」の一閃を放ち、綾が続いて自らの得物である

叢雲刀そううんとうで突き刺して動きを封じる。

覚悟を決めた結の拳が叩き込まれると

人間の心すら失った蛇の死霊は光となって消えて行った。

死霊の作り出した異界は消え去り、現実へと戻る四人。


「割り切ってるつもりなんですが、辛いモノがありますね。」


「そんなモンさ。スッキリする事なんてあんまり無いって。」


綾から見て結と出逢った当初は

何も知らない偽善者に見えていたが

人間の優しさを保とうとするあまり傷つきやすい所がある。

それを含めて必死に生きようとしている。

そんな儚い部分を持ってる印象を受けた。

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