霊が如く:怪異との遭遇
「今度は悟に痺れ生肉でも食わせてやるか」
悪魔は良い感じに痛快で悪辣な生き物である。
とは言っても10万27歳の自分より10万歳ぐらい下なだけの
芹沢綾からイタズラ用途の毒物を購入して帰路に付いていた。
(悪魔は毒物が好き)
こういう日はやっぱり魔界のロックバンドの
上の空に描いて鼻歌混じりに夜道を歩く。
すると、並々ならぬ殺気が漂うのを感じる。
なんだか通りが澱んでいる。経験から察するに死霊が作った
異空間のそれであった。こういう時に霊感が無い人間が羨ましくなる。
それが無ければホンモノの霊と擦れ違っても目が合わないんで
よほどのことが無ければ巻き込まれないのだ。
下手に霊感があると魔獣や死霊の餌食にされてしまう。
「何だ!?」
ヤツは正面から来た。
どの世界でも女と言う生き物は恐ろしいモノである。
そういう事情には疎いが、この世に未練を残した
蛇の様な女の悪鬼・・・これはかなりの怨念を抱えている。
霊的には白蛇などは幸運の証として捉えられるが
死霊として怨念を持った人間と融合した日には悪魔でも退治がキツイ。
動きが早すぎる、捉える事が出来ない。そうしてる間にも
幾重にもわたって攻撃を受ける。初動で後手に回ったのが不味かった。
せいぜい防御するのが精一杯だ。
装甲が持つ間にこの場から撤退する事すら念頭に入れねばならぬ。
戦闘悪魔である師宮は芥子河原みたいに
大人しく生きる為のライフスタイルで役立つスキルなど持たない。
今しか認めない悪魔の最たる物である。
今を認めてこそ未来がある。
デビルスキル:
これを使って周辺がスローモーションに見えて
ようやく素早い敵の姿を正確にとらえることが出来る。
これはかなり魔力を消費するので複数回は使えない。
「そこだァ!」
蛇女の首を長剣の斬撃で捉える。
手ごたえはあったのに霊体が切り崩せない。
相手が怯んだところで彼は撤退を選択した。
「間に合え!」
電撃を剣先から放ち、時空を歪める。脱出への突破口を開いていくが
背後から、予想より早く敵が忍び寄って来て・・・
まずいな。芥子河原に悪戯しようと思ったのが仇になったか・・・
すると、自分が歪めた時空が綺麗な円形に切り取られ
外に現実の世界が見える。
「おい!お釣り貰い忘れてんじゃねえよ!
こちとら悪魔と貸し借りはしない主義なんだよ。」
憎まれ口をたたきながら芹沢綾が助けに来てくれていた。
「これで貸し借り無しだな!」
「お前が借りてんだよ馬鹿。」
手を握られて一気に引っ張られると一気に現実への脱出に成功する。
「ったく、お前、アホっぽいと思ってたけど、これほどとは・・・」
「とは言っても、街に死霊が居るのはマズいな!切り替えよう!」
戦闘悪魔は相変わらずポジティブ。
恐怖を感じた時こそ身体を緩めるのが生存の技術。
固まったが最後、敵に捕食されるだけの餌になるのだ。
それが彼にとっての悪魔人生の教訓なのであった
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