少年・神代涼の正体

場所は変わって今際野探偵事務所。今日は待ち時間に合わせて

結界は解除してある。師宮ヴォルテ准一が連れて来た神代涼と言う少年。


結の悪魔探偵スキルである念写によってステータスを明らかにする。

これが今回の趣旨であった。


「初めまして。私が悪魔探偵の今際野結です」


「芥子河原ヴェンデッタ悟だぜ。よろしく」


「あ、はい。初めまして。」

二人と握手を交わす涼。


彼は人間から悪魔に変異した存在であるからなのか

そこはかとない違和感を放ってるように悟には見えた。


「まぁ、細かい話は抜きにして念写して貰うか!」

大声でハキハキと准一が促す。


「では、そこに立ってもらって。」


例によって白い壁をプロジェクター代わりにして焼き付ける。


しかし、神代涼が感光すると壁一面に紋様が浮かぶ。


「これは・・・何でしょうか?」

監視者からの情報である程度悪魔には詳しくなってる結だが

このケースは初めてだった。

規則正しい五芒星・・・ソロモンの悪魔の紋様だ。


しかし、悟と准一の表情は凍る。事態の深刻さを物語っていた。


「アスタロト・・・超級悪魔の器の証だ。」


「それってどういう事なんですか?」

涼は不安そうに言葉の真意を確かめようとする。


「普通、魔改装甲シェディムギアを素養の無い人間にくっつけても

 宿そうとしてる悪魔に喰われて死ぬ。お前自身がちょっと曰く付きみたいだな」


「涼。研究所で実験台にされるまでどういう生活をしてたんだ?」


「育った村に居た後で何されてたかは・・・覚えてないんです。」


すると涼は胸が締め付けられる感覚に陥って

心拍の音がはっきり聞こえるぐらい、ドクン。ドクン。と高鳴って

崩れ落ちる。

「大丈夫ですか!?」


結が受け止めて、彼女にもたれかかる。

かなり表情が青ざめていた。


「あまり無茶をさせない方が良いみたいですね・・・」


どのみち、これからこの子の記憶が戻るにつれて

また辛い思いをするかもしれない。

まだ悪魔の力が暴走していないのが救いと言った所か。


壁に浮かんだ五芒星の紋章を見るのは久しぶりだったが

これから残酷な現実が彼を待っているかもしれない。

どのみち、生きる事は戦う事。

そして真実とはありのまま残酷なモノ。


世界の均衡に干渉する者が居る以上

この現実を受け止めるしか無かった。




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