悪魔の変身:シェディムギア・サトゥルヌス

悪魔さんこと芥子河原ヴェンデッタ悟は悪魔倉庫デビルストレージ

からあるモノを取り出す。戦闘が出来るとは言っても中級悪魔。

あくまで裏方としての仕事をスマートに・・・と言うのが

本人にとって楽して生きる上での言い訳。


今まではそれで良かったけれども、もしも結ちゃんを

そして平和に暮らしている人間を守り切る事が出来なかったら・・・


10万33歳児の悪魔は1万歳になった頃から

経験値から得られるボーナスポイント。

そのステータスの割り振りをしてこなかった。

下手に強くなってしまうとそれはそれで

魔界深層技術業デビルアビスエンジニアよりも

過酷な魔界任務を押し付けられ

技術職として安全に稼いで美味しいモノを食べる日が少なくなる。

彼が他の悪魔と違う部分があるとすれば闘争本能とか

名誉欲と言う概念が弱い箇所にあると言った所か。

彼は承認欲求の為に何かする事を極端に嫌っているのだ。

そしてそれはこれからも変わらないかもしれない。


学問を愛するのは心の安息を求めているから。

生きる事は戦う事。不条理に抗うという事を知っていても

踏み出せないでいた。

それらの憂いも今の居場所とかこれから悪魔になる人間を食い止める為。

そう思った途端、解き放たずにはいられないモノがあった。


「現世だと、ステータスのレートが変わったりせんかなぁ?スッゲー。」

9万年分貯まってたのでポイントマシマシで強化が可能だった。

ストレージのコンソールにポイントコードを打ち込んで

10分の1までダウンしていた魔力は元に戻る。


そしてボーナスで出て来た魔改装甲シェディムギア

シェディムとは「神ではないという意味でのみの悪」を意味する。

正気ではない正義を謳う者達と戦うには好都合と言った所だろう。


手に持てるサイズに収まってる円盤の様な物体には

結が纏う様な強化外骨格のいわば完全版が内包されている。


「ヴェンデッタ・。その深淵に征く。

『悪とは最期まで他者の正義と戦う意思』。ここに宣言する。 

 我、秩序の星の元に力を示す」


あんまり恥ずかしい儀式っぽいのはやりたくない彼であったが

戦いしか知らないヴォルテがこの世界で稼ぐぐらいの仕事があるとなると

これからは自分が足手まといになりかねない。


一瞬で箱から棘の様なモノが飛び出し、悟の身体に突き刺さり

血を吸いとると、霊体に変化し、彼の胸の中へと納まっていった。


一瞬だけ魔改装甲シェディムギアを纏った悟は

かつてなく滾る感覚を催したが

この感情を自分が最も忌み嫌う憎しみや殺意だと認識すると

まだ使いこなすのは難しい。だけど、やらなくてはならない。

そうした葛藤だけが時計の針を進めていった。


「グリモワール経由で悪魔さんの登録区分が変更されてました。」


「まぁ、ヤバい時が来るかもしれないからね。」


「サトゥルヌスって言うのは・・・」


「俺の名前の由来だよ。意味は・・・忘れた」


「何かの神様の名前だったような?」


「まぁ、俺のもう一つの名前は

 芥子河原ヴェンデッタ・サトゥルヌスでもあるのだな」


「なんか神々しいのと禍々しいのが混ざって聞こえますね」


「何よその目線!?俺の顔に何か付いてる?」


「え!?あぁ・・・心なしか雰囲気変わったかなぁって・・・

 お茶にしましょうかヴェっさん!」


変身を解いたとはいえ

変な風に見られてたとしたらデビルショックだが

こうやって悪魔をやってても戻れる場所がある。と言うのは

彼にとって少し心が休まる瞬間でもあった。

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