第九章:デビル・デスティネーション

新たなる悪魔見参

いつも通り監視者の連絡・・・

直接音声で電話が来るとか珍しいな。


「うっす。」


「君らもなかなかいいコンビじゃないか」


「世間話でこんな電話寄越さないでしょ」


「近い内に君の所に悪魔が来る。」


「カチコミ?お客さん?」


「お客さんだ。君も良く知ってるヤツだよ」


師宮しのみやと言えば覚えているかな?。」


師宮しのみやヴォルテ准一じゅんいちか・・・」


師宮しのみやヴォルテ准一じゅんいち・・・魔界時代の後輩で

主に魔獣相手に先陣切って戦ってる奴だった。

どっかの誰かみたいに食いしん坊属性が災いして

地獄の熊ことジゴックマ君人形制作の過程で出る熊肉を

我慢できずに盗み食いした罪でデビル流刑喰らってこっちに来た。

食い物に関しては魔が差してしまうのが魔界あるあるだ


「それってウチに出向みたいな感じですか?監視者さんからのお話ですし」


「結ちゃんが俺の時みたいに求人出したワケじゃない。

 お仕事仲間が増えた。って事にはなるかな?」


「後輩の悪魔さんってどんな感じなんですか?」


「俺はどっちかと言うと技術担当だったが完全に武闘派と言うヤツだな。」


「へー。強そー!」


「お客さんなんだからリュウノアギト出そうとするなし」


もう武闘派の悪魔探偵に白目剥かされっぱなしなんだから

勘弁してほしいもんだ。


すると事務所の結界を例の如く張りっぱなしだったんで

前よりも電流爆破な音が耳をつんざく。


「あー。またやっちゃいました・・・」


「いいさ。引っかかるヤツが悪い。」


結ちゃんが急いで事務所のドアを開けると

くだんのヴォルテ君が痙攣してのた打ち回っていた。

さすがに効いたらしく、死んだカエルの様にひっくり返って・・・

どうにか蘇る


「あ!芥子河原さん!お久しぶりです!!」


やられた割には復活早いなコイツ。俺より頑丈だな。


そう。コイツは武勲こそ凄まじく

敵は容赦なく殺す男だが、私生活では竹を割った様に

ハキハキしてるのだ。


早速お茶を出して、デビル世間話に花を咲かせる。


「この人が悪魔探偵?ちょっと隅に置けないなー!?」


「こう見えてもリュウノアギトを引いた凄いヤツだぞ。」


「マジかー!?カッケー!!」


しかし、彼が来たのにも事情がある。

何でも、公には明らかにされていないものの

魔獣が不自然に湧いて出たり

そいつらを狩る。と言った仕事が横行しているらしい。


俺達の仕事は魔獣狩りだけじゃないが

まだ緩い方だったんだな。って感じる。


師宮シノミヤは個人で監視者に登録して

そういった魔獣狩りの仕事を請け負っているらしい。

俺みたいにこっちに来て魔力ダウンした様な悪魔は

悪魔探偵と言う飼い主のバックアップが必要だ。

実際助けられてきたし。


「何となく聞いてた事だけどなぁ。俺も気ィ抜いてられねーな。」


「それともう一つ。魔界の技術が横流しされて人間達に浸透し始めてるって。」


嘘みたいな話の中に不都合な真実が紛れ込んでる。

これまでの教訓で分かっていた事なんだが、何故今になって

バランスを崩すモノが現れ始めたのか。


例えば魔界技術が本格的に人類に研究材料にされたら

先進医療の実験と称して

人間の運命を狂わせる悪魔の領域に両脚を突っ込ませる。

そいつは少なくとも人間では無くなる。


俺が以前結ちゃんに使った悪魔血清程度ならまだ一時的だが

人間も悪魔の素養がある以上、ホンモノの悪魔になったら

シャレにならない事確定だ。


「まぁ、監視者さんに言われた事伝えるのが俺の今回の仕事。じゃあまたね」


「おう・・・」


用を伝えたら影の様に居なくなるヴォルテ君。


「急を要する話でしょうか?」


「小耳に挟んどけって感じの案件だな。

脅威が作られてもすぐ戦争にならんのが人間の歴史らしいな。

 金儲けが成立してる間は大人しくしてるだろ。」


「いつかは・・・って感じなんですかね?」


「悪いけどこればっかりは人類が試されてる。俺にも分かんねえよ」


久々に知り合いにあえたのはいいけど

やっぱり生きてる人間の世界に悪魔が囁くのはこの世の常だな。

どっちが悪魔か分かんなくなるぜって答え。

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