第15話

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 ――みきちゃん、僕です。

 今回は『東夜楼蘭』での公演劇に誘ってくれてありがとう。僕等の様なしがない役者集団の小さな劇団に大手芸能プロダクション『アズマエンタープライズ』から声をかけていただいたのも、きっとみきちゃんのお陰だと僕は思っています。

 僕とみきちゃんは出会ってどれくらいだろうね。もう、始まりを思い出せないくらいの幼い頃だったからね。

 みきちゃんは『東夜楼蘭』の劇に誘ってくれた時、いくつかお話をしてくれましたね。それは『警察官ピストル強奪事件』『連続婦女暴行事件』だけじゃなく、根来動眼、それに東珠子さんや田中竜二、火野龍平さんの事等々。そして確かにみきちゃんの言う通り『馬蹄橋』はあった。勿論『七灯篭』もあって、動眼温泉の名残ある旅館街もあった。僕等劇団員は君の言う通り先に入って『東夜楼蘭』で劇の練習をして、そこに泊まり込んだ。

 でも、今回こうしてみきちゃんに調べたことをパソコンでパチパチと音を鳴らして書くうちに、ひょっとしたらみきちゃんが僕に声をかけてくれたのは、過去の事を調査してほしいと思ったからで、役者としての自分は必要とはされていなかったのかなぁ何て、思う次第です。(あっ、でもこれは僕の一方的な邪推かもしれない、もしそうならご免なさい!!汗)

 何故そう思うのかというのは幼い頃からの僕を良く見知っているみきちゃんが、僕自身の偏執狂的性格――つまり物事を深く行動して調べ尽くす性格と後は僕の遠い親戚があるえらい探偵の助手だったことを知っているからで、もしかしたら僕ならその過去のあらゆることを自発的に調べてくれるんじゃないかと思った次第です。だから僕は馬蹄橋の過去に彩られた『東夜楼蘭』に送り込まれたのかなと。

 違うなら再度御免なさい。

 さて、僕はみきちゃんの期待通りだったかは別として、結局自ら自発的に過去を日捲るように調べてしまったのです。そしてそれをここにしたためました。でもせっかくなので僕はこれを小説仕立てにしてみました。そうすれば万一誰かの目に留まっても個人の名も名誉も架空のフィクションとして、また劇の素人脚本として読まれるだけでしょうから。

 僕という存在は決して現在のみきちゃんの存在を危うくするものではない唯のしがない三流劇団員の役者です。いつでも蜥蜴のしっぽの様に切り落とせるようなもんです。

 では、みきちゃん、冒頭を長々と書きましたが物語のあらすじとして読んでいただいたら、いよいよ本文へと進んでください。

 そう、この短編小説のタイトルは『馬蹄橋の七灯篭』にしました。

 それでは、みきちゃん。僕の拙い短編小説を是非読んで下さい。

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