第9話 遭難

 某公共放送のホームページを見ていたら山での遭難事故についての記事が掲載されていた。それも低山での遭難について取り上げられていた。他人事ではない。そう感じる。私もソロでの入山が多かったからね。

夜になって身動きができなるケースや道に迷うケースなど色々と取り上げられていた。遅い時間の入山や道がわからなくなった段階での判断ミスが原因だと思える。

下調べや計画の不備が原因だということだよね。


 調査や捜索で道のないエリアにも入っていったことのある私の場合は一番怖いのは怪我で動けなくなるケースだ。道は登山道なのか作業道なのか獣道なのかはある程度的確に判断することができる。できないと地図だけでの調査などはできない。更に地図と異なる状況に困惑することも多い。風水害によってもたらされた倒木・がけ崩れなど様々だ。地図にある道がなくなって谷があり、道の続きは30m先の谷の向こうにあるというケースもあった。谷の深さは20m以上あり、持っている装備ではとても越えられそうもなく、迂回路もなかったので引き返してきたことが懐かしい。予定は変更できるようにしておかなくてはいけない。エスケープルートは複数用意することが必要だ。計画変更は山ではあたり前のことだと思う。

 特に天候の状況を判断して戻ることは重要だ。かなり以前の話だが台風が向かっていることがわかった事がある。バス停から2時間かかる予約を取るのも大変な秘境の宿に泊まり、更に北上してキャンプで進む予定だった。しかし、状況からこれ以上進むのを諦めた。東に抜けてバス停からすごすごと帰宅した。

台風一過、宿に通じる林道はがけ崩れで数ヶ月に渡って通行止めになった。宿泊者は消防によって救出されたようだ。私が進む予定のエリア、私が利用しようと考えていたキャンプ場では倒木で亡くなられた方がいた。台風の中のキャンプは危険だと改めて認識させられた。私が利用したのは登山を計画する中で準備したエスケープコースだ。これを利用するのは残念である。準備のために使った時間や費用を考えるともったいないと思ってしまう。しかし引き返す勇気は山に入るには大事なことだと思う。


 そういう私も遭難したことがある。捜索や救助をされることはなかったが「遭難」をしたと思う。

南アルプス南部の3000mに近いところで身につけていた貴重品以外を突風で失ってしまった。遠くを台風が通過していたその日、晴天だったにもかかわらず、トップに見舞われた。休憩中に突然体が浮く上がった。体勢を変えたことで私自身は地面に落ちた。装備の殆どが入ったザックは谷に飛ばされていった。直ちに下山にかかった。エスケープコースを利用して下山した。近くの山小屋には状況を説明しておいた。お金などはあったので食事の出る宿まで下山して宿泊、翌日には登山靴の警察の出張所に状況を届けた。ザックが発見されて捜索がかかっても困るので本人が無事だと届けておくことが必要だ。自力で下山できたし被害は装備だけで済んだのは幸運だったと思う。南アルプスではキャンプ場で見かけたグループのメンバーの一人が下山時に滑落で亡くなったというニュースを見たことがある。なんともないようなところで足を踏み外したようだ。下山時にはこのようなことに注意が必要だ。安倍川の奥の南アルプスの前衛の山で挨拶した人が翌週も同じ山に登り砂防ダムから落ちて亡くなったという新聞記事に接したこともある。コースを間違えて砂防ダムの上部に出て転落してしまったようだ。砂防ダム周辺も危険なところがあるので十分な注意が必要だ。


 東京奥座敷に当たる山では赤バイが小型の消防車を誘導して登っていくのを見たことが何回かある。誰でも登れると安易に登って怪我をするという遭難はここらの山では多いようだ。奥多摩の山々では熊との遭遇にも気をつける必要がある。結構、熊の目撃情報も多いから事前に情報収集を行うことが必要だと思う。どちらにしろ情報収集を行い計画に余裕を持って登山を行うことは大事だと思う。


 当然私のオデカケでも同じことが言える。公園内の道の中には崩れやすいところがあったり倒木に遭遇するケースもある。当然天気の悪いときには行かない、危ないと思った戻ってくる。情報収集と余裕ある計画。これらはオデカケでトラブルに遭わないようにする秘訣だと思う。あと、体調管理も重要だよね。体調が悪かったら絶対に出掛けないようにすることは大事だと思う。


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