Session5-14 また、ここで星を見よう
あたりに響くのは波の音。
見上げれば、満天の星空が冒険者たちの目の前に広がっている。
シンカイ:見上げながら、オルフの手をそっと握る。
オルフ:何も言わず何も反応せず。振り払いはせずにいよう。
アルクトス:「……」煙草吸いながら星空を見上げている。
シュシュ:「わっ……綺麗だな……」樽からひょっこり顔を出して小さく呟く。
GM/ライズ:「うん、綺麗だねっ。……こんな場所があるなんて、昔は思ってもみなかった」桟橋に腰を掛けるライズ。「……ずっと、森の中で暮らしていたから」
シュシュ:「……私も少し前まで小さな世界しか知りませんでしたから」
GM/ライズ:「じゃあ、一緒だね」
シュシュ:「はい。一緒です」目を閉じ波の音に耳を傾けながら。「(……勇気を出して、手を取ってよかった……かも)」
オルフ:「(……何も知らない奴も、失った奴も、ただ何となく一緒にいてくれる奴も。全員利用して、俺は……何処へ向かおうとしているんだろうな)」
シンカイ:「本当に。極めて大きく、限りなく小さい世界だわ……」
シンカイ:「……わたくしのお父様も、夫も。紫水晶に関わったが故に亡くなったのですって」ぽつり。
GM/ライズ:「……紫水晶、か」
シンカイ:「因果かしらね……。わたくしが紫水晶に関わったのも、お導きかしら……喜ぶべきなのかしら?」
イスデス:「へぇ、そこにも関りがあったんだね」
シュシュ:「……そう、だったのですね」
GM/ライズ:「オイラの力も、わからないし。……それに、アルクに反応した遺跡も……あれも、紫水晶に関わってるのかな……」
シュシュ:「……シンカイ様は怖くないんですか……? 紫水晶に関わることでご自身ももしかしたら……」
GM/ライズ:「……死んじゃうかも、しれない……」
オルフ:「…………」
シンカイ:「恐いに決まっているわ。大いなる自然と力の前では、独りではあまりにも無力……師の教えよ。でも、だからこそ仲間を……。アルを求めてグランゼールに来たんだもの。今は大丈夫」
シュシュ:「そうですか……独りでは……」ちらりと横目で皆と海でぷかぷか浮かぶジャンくんを見て。
GM/ライズ:「仲間……。オイラも独りじゃ、なにもできなかった。あのとき、みんなが助けてくれなきゃ……オイラもきっと死んでた」
オルフ:ただアルとだけしか言ってないからアルクトスかもしれない。
アルクトス:愛称で呼ぶほど親しくはない(笑)。
オルフ:「……だからアルじゃねぇ、そんな名前の奴はもうこの世にいない。アルトゥール・ブルーはアウレリア・ブルーの死と共に消えた。ここにいるのはただのオルフェウスだ」
シュシュ:「(……私も怖かったら頼って……。でも……頼るのが怖い……。また裏切られるかも……)」かつての"見捨てない"という言葉が脳裏を過り、オルフを見る。
オルフ:「……ただの、雀のお宿亭でパーティーを組んでるだけのオルフェウスだ。その分だけ手を貸すのは
シンカイ:「……わたくしが出奔したせいで、お母様にも、夫の家にも迷惑がかかっている。 助けようと戻っても弱みになる」手を強く握る。
「──真に怖いのは……自分が討ち向かう敵への恐れなど、仲間がいれば乗り越えられる。けど。真に怖いのは、……。自分の手では本当に何もできない事だけよ。だから……」
GM/ライズ:「……シンカイ……」
シンカイ:「だからアル。お願い、今だけは……」涙の浮かんだ顔を隠すように、オルフの腕を抱きすくめる。
イスデス:「(ああ、これはいけないなぁ。思ったよりもシンカイちゃんが、かぁ)」
シュシュ:その涙を浮かべた顔から目を逸らすように海に視線を向ける。
オルフ:「……それでも、俺は」アルトゥールは死んだのだ。もういない。いてはいけない。だがそんなことを告げる事も出来ず、ただ黙ることしか出来なかった。
シンカイ:「……っ……」縋ろうとしていたのは幼馴染のアル。今縋りたいのは冒険者オルフ。両方を抱きながら。
GM/ライズ:「………ねえ、みんな」
オルフ:「何だ」
GM/ライズ:「今日さ。楽しかった?」明るい口調で、元気づけるように言う。
イスデス:「楽しかったよ!うん、良いねぇ。釣りってのも。拙としてはもーっと大きいのが釣りたかったかな?」
アルクトス:「悪くは、なかった」
シュシュ:「……。はい、痛い目にも、恥ずかしい目にも(ゴニョゴニョ……)遭いましたが、皆様と過ごした穏やかな時間は……かけがえのない時間でした」
GM/ライズ:「うん。オイラも、楽しかった」ふわり、と風がそよぐ。「また来ようよ、みんなで」
オルフ:「……機会があればな」そっけなく答える。
アルクトス:「気が向けばな」同じく。
シンカイ:「うん……」
GM/ライズ:「オイラもさ。……色々なことがあって……家も、故郷も見つからなくて。悲しかったけど……でも。こんなに広い場所があって、こんなに楽しいことを見つけて」
GM/ライズ「"冒険"って……"冒険者"って、こういうものなんだなって」
シュシュ:「……そう、なのかもしれません」
GM/ライズ:「悲しいことが、悔しいことがたくさんあるけれど。もう戻れない場所や時間も、たくさんあるけれど。それと同じくらい、ううん。それ以上に、嬉しいことや楽しいことがあるんじゃないかな」
シュシュ:「(そっか……冒険者って怖いだけじゃないんだ……)」
イスデス:「ふふふ。う~ん、ライズくんは良いことを言うねぇ! もふもふ!」もふりに行きます。
オルフ:「……当然だ。俺は栄光をこの手に掴むために冒険者になったんだからな。」
GM/ライズ:「ふわー!! かげんしてー!!」
イスデス:「さあて、それはどうかな。気分によっては撫で散らかすまでやるぞう!」
シュシュ:「(嬉しいこと、楽しいこと……私もそれを享受していいんだ)」海を見ながらぽろりと小さな涙を零す。
シンカイ:「ねぇ、オルフ。アルの栄光と……オルフの栄光って、なぁに?」
オルフ:「……俺は付属品だった」かつては母の、そして、気付いていないが今もきっと。
GM/ライズ:「ふぞくひん……」
オルフ:「俺に価値はない。俺は誰かの価値に付随するだけの寄生虫だった。そんな在り方はもう御免だ」悲しみが、怒りが混じる。
オルフ:「俺は俺を手にする。誰もに認められ、脅かされる事も、後ろ指を指される事もないような、確かな自分の価値を。……そのために、何も持ってなくても上を目指せる冒険者になったんだよ」
シンカイ:「水を差すつもりは決してないのよ。でも、そんな事無かったと覚えていて? 病で数分も走っていられなかったわたくしにとって、貴方は……。今も、ね?」
GM/ライズ:ライズはよくわかってないような、しかし信頼の篭った表情で笑いかける。
シンカイ:「他の皆様にとっての貴方もそうよ?」
アルクトス:「……オルフ。度々聞くが、その上はどこまでだ?」
オルフ:「さあな。結局、俺の目的は俺だけのためのものだ。だから、何時かどっかで満足できるまで進み続けるしかないだろう」
アルクトス:「ふん……」
イスデス:「どうせなら行くところまでいかないかい? 果ての果て、最頂点まで。」
GM/ライズ:「せかいさいきょう!」
シュシュ:「……それがオルフ様の生きる目的……私なぞには到底理解できない目的ではありますが…えと、なんていうか……」
オルフ:「なんだ」
シュシュ:「……拾っていただきありがとうございます。これからも誠心誠意尽くさせていただきます……」思う所はあれど口にできるのはこれだけだった。この人でよかった、と。
GM/ライズ:「あのね。オイラもね、オルフに助けてもらったり、一緒に冒険したりして、嬉しかった!」フォローするように続ける。
オルフ:「……はぁ。物好きだな」呆れたような目で2人を見て。「いずれ後悔する事になっても知らないぞ。俺はこれからも紫水晶に関わり続けるだろうからな。なんせ、これが今一番儲かる」
自身の持つ現在一番の特異性ですからね!!
GM/ライズ:「いいじゃん! オルフもなんだかんだで釣りして楽しんでたくせに!」
オルフ:「物事をわざわざつまらなくする趣味はねぇよ。それだけだ」
GM/ライズ:「……オイラも、うん。この力とか、それから……集落に戻るとか。……紫水晶には、関わっていかなきゃいけない気がする」
シュシュ:「……紫水晶に関わることで怖い目に合うことはわかっていますが……」
GM/ライズ:「でも……今日みたいに。それ以上に楽しいこともあるはずだから」
シュシュ:後の言葉は発さずライズに同調するようにゆっくりと頷く。
GM/ライズ:「全部、全部、みんなの目指すこと。みんなが欲しいもの……手に入れて」
GM/ライズ:「それで、皆で笑って、また来ようよ。また、ここで星を見よう」
オルフ:「(ああ)」ふと、頭の片隅で何かが過る。「(こいつらにも、誰にも脅かされないような確かさを)」そこまで考え、黙って首を振る。
シンカイ:「……星……。ジュリアンの
シュシュ:「……それは、すごく素敵なことでございますね」
イスデス:「星、星か。……うん、そうだね。また一緒に見ようか」
アルクトス:「時間があれば
GM/ライズ:「……うん!」
すべてを飲み込みそうな漆黒の空。
"導きの港"ハーヴェスから漏れ出す蒼の光が夜空に路を創り、
標代わりに、数多の星々の輝き。
──この日、この時。冒険者たちが視た8月のハーヴェスの空には、
確かに、星が一面に輝いていた。
第5話 『ハーヴェスの海へ』 了
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