Session2-9 少年の葛藤

■シンカイ・アルクトスチーム


GM:西側をオルフたちに任せ、東側を警戒する2人。

アルクトス:火縄壺で煙草に火を付けながら、警戒待機してます。

シンカイ:その火種でたいまつを2本をかかげて警戒中。後衛に置いておく用、前衛に持ち込む用。

GM:おおよそ、オルフたちが襲撃地点に向かうまでは何事も起こらない。周辺で作業をしていた農夫たちが、中央へと急いで向かっていく様子が見えるのみだ。

アルクトス:「これを吸い終わって何も無いようなら、西側に行くか」

シンカイ:「その上でじっくり待って、空きになった所を襲われてはひとたまりもありませんが……」

アルクトス:「それはあるが、農夫の避難が終わればそこまでひどい事にはならんだろう」

シンカイ:「……避難場所に絶対性があるのならば。『ちょっと』が数人だというのなら看過したくはありませんが……」


GM:遠方では、複数の蛮族の金切り声が聞こえる。

ここで、異常感知判定をしてもらおうかな。目標値は10だ。

アルクトス:(ころころ)……9。さっきから思ってたけど、今日ちょっと出目が微妙だな……。

シンカイ:(ころころ)11で成功でしてよ。

GM:では、シンカイは気づくだろう。遠目からで、曖昧だが……中央に集まっている者の数に違和感を覚える。管理者イザムナの声を聴いて、みなバリケードのある中央付近に避難しているはずだが……。

シンカイ:「妙ですわね。……避難者が少ないですわ。ええと……」数える。

アルクトス「何……?」

GM:夕陽に照らされたシルエットを、じっくりと見て数えてみるなら……10人いるはずが、人影は9人。1人、足りない。

シンカイ:「既に余所で被害にあっているか、それとも幾人か化けていたのか、足止めされているか……立ち向かっているか。……一人で立ち向かう筈はないと思いますが」

アルクトス:農夫がひとーり、ふたーり……一人足りなぁい。

忘れないうちに先に【フェアリーウィッシュ】っておくか。(ころころ)成功。

シンカイ:いーなーいーのーはー、ネームドですかね。

GM:具体的に誰がいないのかは、少々判別しづらいだろうが……ふむ。異常感知も成功したので……シンカイは、農場の端に人影が見える。ディックの姿だ。

シンカイ「! アルクトス様、少々こちらへ。……ディック君がいます」そちらに近づきます。

アルクトス:「居ないのはあいつか」シンカイの後に続きます。



GM:少し近づけば、ディックの様子がわかる。あたりを気にしつつ、隠れながら……東の森へ向かおうとしているぞ。どうやら君たちには気づいていないが、大声を出せば気づくだろう。

アルクトス:別に何か武装してる、とかではないんだよね。

GM:一応、武器や防具を持っているようには見えるよ。ですが、冒険者が持つような立派なものではない。農夫でも扱える簡単なもの……短いサーベルやクロースアーマーを手にしているのがわかる。

シンカイ:「……如何なされますか? アルクトス様」

アルクトス:「気になるな……少し後をつけてみるか。気づかれたなら改めて声をかければいい」

GM:後をつけるなら、隠密判定をしてもらおう。目標値は(ころころ)11とするぞ。

シンカイ:「承知」金属鎧ペナはあるが、こちらもこっそりつけます。(ころころ)くっ、失敗。

アルクトス:(ころころ)ピンゾロ(笑)。

シンカイ:デデーン。

アルクトス:後をつける(別に隠れる気はない)。

GM:では、森に入ろうとしたディックは、それをつけてくる君たちに気づく。彼はびくりとして振り向き、硬直するだろう。

シンカイ:「何をされておいでですか。非常時にて、避難場所は中央でしてよ?」

アルクトス:「そんな装備でどうするつもりだ?」

GM/ディック:「……俺は、その……だ、脱走、するんだ。ゴメン……! だから、来ないでくれ! 絶対に、来ちゃだめだッ!!」震える声でそう言いながら、森へと駆けだすディック。

シンカイ:これ真偽判定できますか(食い気味)。

GM:OK(はぁと)。目標値は7。

シンカイ:(ころころ)まるっとオミトオシじゃ!

アルクトス:(ころころ)問題なく。

GM:君たちはわかるだろう。脱走というのは嘘だね。

アルクトス:それはそれとして、スネア撃っていいですかね。どっちにしろ行かせるわけにはいかんので。

GM:ほう! 射程距離……よし。撃てるぞ!

アルクトス:(ころころ)行使13。

GM:くっ……!(ころころ)抵抗12で通る!



妖精により作られた土腕に足をとられ、ディックは転倒。

その隙に、シンカイはディックのもとへ駆け寄ります。



アルクトス:筋力が7しかないので、抑えても振りほどかれそうだから任せる。

シンカイ:「言いなさい。何がありましたか」鞘に納めたままのツーハンドソードの平たい部分で押さえつけます。

GM/ディック:「っ……それは……」焦りながら、ディックは目を逸らす。

「……オレが……これは、オレが責任取らなきゃいけないことなんだ。言ったら……みんなに迷惑がかかる。あんたたちも……死んじまうかもしれない」

アルクトス:「最初から話せ」冷ややかに。

GM/ディック:怯えたディックの目元から、熱い滴が零れ落ちる。

シンカイ:「……いくらでもかけなさい。それを共に切り払うのが、わたくしたち冒険者です」

GM/ディック:「……冒、険者……」ディックは暫く泣き続けるも、意を決したのか、話し始める。


「……オレたちは。ここへ来るまで、遺跡ギルドに脅されてたんだ。

ここへ来れば、ちゃんと働けば、逃げられると思った。

けど、ある日……オレのところにあいつが……昔、俺たちの上司だった男が来たんだ。

名前は知らないけど、遺跡ギルドに連なる組織の構成員でもある、って言ってた。

それで……そいつに言われた。仲間を眠らせてこっちに引き渡せ。そうしたら借金はチャラにしてやる、逆らったら死だ……って」


アルクトス:「なるほど。それで、その脅しに屈したというわけでもないようだが?」

GM/ディック:「……あいつの待ってる場所に行って、オレが……カタをつけようと思ったんだ」腰に差したサーベルを見る。「もちろん、こんな装備で勝てる相手じゃない事は分かってる。でも……ケジメをつけなきゃ、って」

シンカイ:「そやつはどのような者ですか?特徴、様相など」

ディック:「銀の長髪で、長剣を持ってる。身長は180cmくらいの人間だった。……それで、"紫水晶"を使うんだ」

アルクトス:「(また、"紫水晶"か……)」



"紫水晶"。Session1……1週間ほど前に、冒険者たちが野盗から名前だけは聞いたアイテムです。

使用者に大きな力を与えてくれるという、謎の水晶。表だって取引されない非合法な品でありますが、それを『遺跡ギルド』の構成員であるという男が持っているのであれば、筋は通ります。



GM:遠方から聞こえていた喧噪も収まってくる。どうやら、コテージ付近での戦闘は終わったようだ。

アルクトス:「さっきの蛮族襲撃の件、関わっているなら今からでも対処する必要があるか……」

GM/ディック:「……多分だけど」ディックが口ごもりながら言う。「そいつがけしかけたんだと思う。……襲撃がちょうど今日だなんて、タイミングが良すぎるんだ」

アルクトス:「ふむ……」とりあえず連絡しまーす。【ウィンドボイス】を行使。

シンカイ:お願いしまーす。

アルクトス:(ころころ)成功だ。




GM:【ウィンドボイス】が、コテージの周辺にいるオルフ、シュシュ、イスデスへ届く。風に乗って、アルクトスの声が響くぞ。

オルフ:急いでそっちに向かおうとしていたところだったな。

アルクトス:『聞こえているだろうか。 私だ』

オルフ:「! ああ、聞こえてる」

アルクトス:『借金取りに脅されて早まった馬鹿を、こちらで捕獲した。とりあえず現状は話を聞いているが、どうにもきな臭い。余裕があるなら合流してくれ』

オルフ:こっちの声も聴けるっぽいか。

「問題ない。……というか時間に余裕がありゃ魔香草が欲しいし、まずは合流だな。さっき分かれた地点で落ち合おう」

アルクトス:『了解した。こちらも戻ろう』

イスデス:「さて、向こうも何かあったらしいが……」

シュシュ:「……ディック様。ご無事……と言えるかはわかりませんが」

オルフ:「イザムナさん。アンタとそこの2人も一緒に来てもらえるか?」知りたがってそうだしね! 別に誘ったわけじゃないんだからね!!(笑)

GM/ピピン:そうですね。全員同意します。「おれも……知りたい。ディックにだけ背負わせちゃったのも、おれだから……」

オルフ:「背負ったのはアイツだろ。責めてやりゃいいんだ」そんなことを言いつつ合流だ。




アルクトス:「向こうも片付いたようだし、合流することになった」

シンカイ:「かしこまりました。……ほら、いきますわよ」ディックをやさしく引っ張り起こしていきます。

GM/ディック:涙を流しながら、よろめいて立ち上がる。シンカイにもたれるように……安堵と、ささやかな恐怖の混じった表情だ。

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