第1話 『雀のお宿の初依頼』
Session1-0 〈雀のお宿亭〉
アルフレイム大陸南部、ブルライト地方。
西に、蛮族との戦いの渦中にある砂漠の国、ラージャハ帝国(人口12万)。
南に、念願だった外洋航海可能な魔船艇の再建を達成し、国外貿易により栄えるハーヴェス王国(人口8万)。
東に、コロロポッカの森に囲われた、地方一の魔法技術を持つ大国、ユーシズ魔導公国(人口10万)。
それら3国を分かつように、地方の中央を南北に貫くディガッド山脈のふもとには、「迷宮王国」と称される通り、国内に広大な魔剣の迷宮――"大迷宮"が存在するグランゼール王国(人口3万)が、著しい発展を遂げていた。
3国間の中心に位置するグランゼールは、近年、各国に対して『魔航船』による交易を開始。それにより他国からの冒険者や商人たちが集まってきており、3国の内情を探るスパイが流入したという噂も立っている。
人口増加に対し、食糧供給が追い付いていないことが何よりの問題であり、『魔航船』による食糧の輸入によってある程度の緩和はなされたものの、それは一時的なものであると言われている。そしてグランゼールには、一般の目には触れてられいないもうひとつの『問題』が隠されていた──。
GM:さてさて、さっそくですが第1話。まずは、皆さんの所属する冒険者の店、〈雀のお宿亭〉の紹介をさせていただきます。
〈雀のお宿亭〉は、「迷宮王国グランゼール」近郊。
急激に増加する住民に対し都市計画が追い付かず、防壁の外に広がるように発展している「新市街区」のメインストリート沿い……"希望街"と呼ばれる場所に、ここ最近、いつの間にか建築された冒険者の店です。
特に食事に関しては一家言あるようで、店が建ってしばらくは怪しまれていたものの、本職顔負けの料理の腕前と栄養バランスを考えられた献立は、またたく間に新市街区とグランゼール内に伝わることとなったようです。
イスデス:まず胃袋を掴め、とはよく言う。
オルフ:飯が美味いとみんな寄ってくるからな。
GM:店の主人は「クレナイ」と名乗る、その名の通り紅い鳥の翼をもつ女性……身長130cmほどの「ディーラ」と呼ばれる幻獣ですね。
シンカイ:幻獣がお店のマスターを……ですか。
アルクトス:それで蛮族も受け入れている、というわけだろうか。
GM:そうですね。幻獣であるクレナイにとっては、人族も蛮族も変わらず貴重な労働力であり、友人となりえるかもしれない者たち、と考えているわけです。
しかし、グランゼールの住民にとって蛮族は倒すべき敵であることに変わりはないので、蛮族の冒険者たちはその種族を極力隠したり、"名誉人族"の地位を取得するようにと促されています。
シュシュ:わ、私はまだそんな名誉点ありません……!
GM:大丈夫です。ただ露呈しただけでは、「まあ、クレナイが認めたのであれば……」と一応は黙認してくれますね。その程度には〈雀のお宿亭〉の知名度や、これまでに勝ち取ってきた信頼、それらが人々に与える安心感というものは確かだと考えてください。
……もちろん、あまりに目に余るような行為をしでかしてしまえば、クレナイにざっくりされてしまいますが。
シュシュ:ひぇ。
オルフ:クレナイも相当な実力者、ということか。
GM:〈雀のお宿亭〉は広々とした庭付きの4階建てで、1階には食事処と夜にのみ開く酒場、そして冒険者たちがたむろするホール、密談部屋と、登録済みの冒険者が無料で入れる露天風呂があります。
入浴料を支払えば一般客も入れるようになっており、時間帯によって一般客専用、冒険者専用が入れ替わる形になっていますね。
また、2階と3階は冒険者の寝泊まりする簡素な個室が用意されています。
イスデス:ふむ。機能としては通常の冒険者の店と同じようなものかな。
GM:そう思っていただければ。ただ、その方針は他の店とは若干異なります。
「迷宮王国グランゼール」に存在する冒険者の店ながら、その目的は大迷宮の探索ではなく人助け。主に食糧問題や難民問題、蛮族の襲撃事件などに対応しています。
国内や新市街区に貧民街、グランゼール国外からの依頼もあり、果ては
『ユーシズ魔導公国』『ハーヴェス王国』『ラージャハ帝国』、
極寒の地『ダイケホーン』から持ち込まれるものもあるといいます。
オルフ:他国から?
シンカイ:わざわざ持ち込んでくるというのは、何かワケアリでしょうか。
GM:そのあたりは、今後のお楽しみ。
さて、今卓はここ冒険者の店〈雀のお宿亭〉から、みなさんがパーティを組む前からのスタートとさせていただきます。よろしくお願いします!
一同:よろしくお願いしまーす!
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