Session1-3 初依頼は2本立て

GM:新パーティおめでとさん、いや止めときなって絶対怪しいわよ……などと、周りの冒険者たちでがやがや食堂が盛り上がる最中、食堂に130cmほどの背丈の赤髪の少女が慌てた様子で入ってくる。腰には刀を下げていますね。

イスデス:む、これが噂の。

GM:はい、冒険者の店〈雀のお宿亭〉の店主であるクレナイです。

給仕メイベルと同じく鳥の翼、そしてあしゆびを持っていることがわかる。もっとも、ゆったりとした外套とブーツのおかげか、そこまで人間の子供と変わらないように見えますね。

アルクトス:シュシュと背丈はそう変わらないな。

GM/クレナイ:「し、失礼しまちた! 冒険者登録をしたいというお人がいらした、と聞いたのでちが……」と、君たちの側に近づいてくる。

オルフ:「ああ、この2人だ」シンカイとアルクトスを紹介しよう。

シンカイ:剣士同士特有の直感で、すぐにお行儀よく身を正します。

アルクトス:「短い間だろうが、世話になる」

GM/クレナイ:「この冒険者の店、〈雀のお宿亭〉の主人、クレナイと申しまチュ」

クレナイも礼儀正しくぺこり、と礼をする。少々舌っ足らずな印象を受けるだろう。

シュシュ:「ク、クレナイ様……おはようございます」容姿に関わらず上司は怖いのかびくびく。

GM/クレナイ:「おはようでち、シュシュ。今日もがんばってるでちね」シュシュには笑顔で挨拶を交わすよ。

シュシュ:少しだけほっとした顔になる。


GM/エミディオ:「ふむ。女将、珍しいこともあるものだぞ。オルフが彼らとパーティを組むのだと」と、エミディオが経緯を説明するだろう。

オルフ:「……そういう事だ。この2人の登録と、何か依頼を渡してくれ、クレナイ」 

クレナイ:では、クレナイは君たちの身なりや佇まいを確認し、懐から依頼書の束を取り出し……少しだけ迷う素振りを見せてから、1枚を取り出す。「そうでちね、ちょうど今しがた、衛士から依頼が入ったのでち。もしよければ、試験がてら受けてみまチュか?」

イスデス:「おお、早速。」

シンカイ:「是が非にもお受けさせて頂きます。我が望み、そして他者がために。」

アルクトス:「思ったより早かったな」別れが。

オルフ:いや、すぐ別れられたら困るから! せめて俺が成り上がるまで待ってくれ!(笑)

シュシュ:「えっ、そんないきなり……? えっえっ?」おどおど。

オルフ:依頼元は信用できるラインだな、と頷いた上で内容を尋ねよう。

クレナイ:では、クレナイは君たちの囲んでいるテーブルに、依頼書と地図を広げるよ。依頼の内容は次の通りだ。



●依頼書●

【田園地帯の問題解決】

 依頼主:グランゼール衛士隊

西港地区の南東に広がる田園地帯に"うずまき農場ホイールフィールド"が発生した。

その元凶たる魔物『ダンシングソーン』が、まだ近場に居るようだ。

農作業に支障が出かねないため、これらの討伐をお願いしたい。

また、田園地帯周辺で最近、出入国者を狙った野盗が出没するとの

情報が入っている。

どうやらシュウェーヌ河付近の旧街道を根城にしているらしい。

被害が増える前にこれを無力化してきてほしい。


報酬は1人あたり、『農場付近のダンシングソーンの討伐』達成で300G。

『野盗団の無力化』達成で700Gとなり、合計して1000Gだ。

この2件を同時に引き受けてくれる場合、別途、前金として100Gを支給する。

詳細は、グランゼール南東門の衛士隊へ問い合わせてほしい。



GM:"うずまき農場ホイールフィールド"については、見識判定を行ってもらおうかな。目標値は11だ。

アルクトス:(ころころ)……15で成功だ。

オルフ:(ころころ)5で失敗だ……。「聞いた事がないな。有名な現象なのか?」

シュシュ:(ころころ)8。「私も存じ上げません…この辺りには来て間がありませんので…」

シンカイ(ころころ)4。「どういうことですってばよ?」

イスデス:(ころころ)おっと、こっちも15で成功だよ。

GM:アルクトスとイスデスは知っていた。この辺りに来た時に耳にしたことがあったのだろう。



グランゼールの田園地帯では、偶に妙な現象が起こる。一夜のうちに田畑に『ダンシングソーン』と呼ばれる魔物が現れ、そこを荒らしていくというのだ。

そして、その荒らされ方……つまり、稲や麦などが倒されて付けられた模様が、非常にきれいな、幾何学模様になっている、という。

いわゆる、ミステリーサークルというやつだ。それを人々は"うずまき農場ホイールフィールド"と呼んでいる。



アルクトス:つまり、ラクシアは滅亡する……!

一同:な、なんだってーーーー!?

GM:はい(笑)。この幾何学模様なんですが、魔域の出現を予知してるとか、魔剣の迷宮内部の地図だとかいう説がありまして、冒険者たちがそれをスケッチしに現れることもあるとか。

アルクトス:端的に説明しておこう。「まあ、諸説ある」

イスデス:色々話した後、これについて持論を語り始めます(笑)。

「拙としてはこれは魔神からの挑戦状なのではと……!」

オルフ:「なるほど、原因不明って事だな。詳細は不明だがダンシングソーンって奴を倒すのが依頼の内容……と」持論は聞き流すわ。

GM:ダンシングソーンについても、ここで魔物知識判定をしましょうか。目標値は10で、弱点値12を抜けば、弱点が判明したものとしておくよ。

イスデス:(ころころ)おっ、12で弱点抜いた。

シュシュ:わぁいでち。


冒険者たちはダンシングソーンのデータを確認する。

なかなかの命中力と「痛恨撃」を持ち、この時点ではそこそこの強敵だ。


シュシュ:炎弱点だー! 燃やせ燃やせー!

アルクトス:あ、そうだ契約宣言してねぇ。

GM:今しておいたことにしていいぞ!

アルクトス:やったー! じゃあ炎・土・水・光で。フェアテ初体験なので、頭から抜けてたわ……。

イスデス:「バインディングソーンだろ? まぁそこそこ危険な植物さ」ちょこちょこ盛って語る。

オルフ:「それ、どっかの神官の魔法の名前じゃなかったか」

GM/クレナイ:「知ってるくせにそうやって歪めて楽しむのはやめるでち」ぺた。

イスデス:「あふん」

シュシュ:「植物の魔物……ですか。茨は……痛いから嫌だなぁ……」二の腕あたりを抑えて。


GM/クレナイ:「このダンシングソーンの討伐だけなら、おそらく難しくはないのでちが。もうひとつ……依頼書にもある通り、最近野盗が出没しているとのことでちね」

シュシュ:「ひっ……や、野盗が出るのですか……」

シンカイ:「わたくしとしてはそちらの方が気になりますわね。十把一絡げでしたらクシャポイで済むのですが」

オルフ:「……野盗なんて、ンな事するよりここで迷宮にでも潜った方が稼げるんじゃないか?」

GM:田園地帯は、背の高い植物……イネや麦、トウモロコシが多く栽培されており、隠れて出入りしやすい環境になっているんですよ。

なので、グランゼールに密入国したり、あるいは犯罪を犯して密かに出ていく者がいたり、そうした『襲われても助けを求めづらい』者たちを狙った盗賊が出るのも珍しくはないことだ、といいます。迷宮に挑むにも、入場料が必要ですしね。

アルクトス:なるほど。

イスデス:そっち系かあ。

オルフ:「つまりある程度乱暴にやっても文句は言われないって事だな」

間違えてぶん殴ってしまってもその人は後ろ暗いのでセーフ!!

GM/クレナイ:「ま、そういうことでちね」オルフに頷く。


イスデス:「ダンシングソーンの強さは分かるが、賊の力量がつかめないのがちょっと不安点かな?」

シンカイ:「依頼料がこれぐらいの相場でしたら、新人でも心得があれば何とかなる、という具合なのでしょう」メタ読み含む。

GM/クレナイ:「この2件、同時に請け負うのであれば、前金として1人あたり100Gが別途支給されるらしいでち。……油断は禁物でちが、おそらくはそこまでの手練れではないでち」

イスデス:「ふむ。まとめて受けて片方しか達成できない場合、どうなるので?」

GM/クレナイ:「その場合は報告時に、前金ぶん差し引かれるでち」デメリットはない、と考えていだたければ。

オルフ:「なら、ひとまずまとめて受けよう。……じゃない。まとめて受けて構わないか?」そういや組んでるんだった、とみんなに。

シンカイ:「構いませんともオルフ。ですがまずは一つ潰しましょう。確実に!」

アルクトス:「了解した」

シュシュ:「ぁ……ぁぅ……。皆様がそう仰るのならば……」

オルフ:「……別に無理に両方行くわけじゃない。返金するだけなら損するわけじゃないしな。まず片方片付けて余力がなければ撤退して返金する。無理をさせる気は無い」

シュシュ:「……はい。お気遣い……感謝いたします」

オルフ:「別にお前がいなくてもそうする。気遣いなんかじゃない」ツンデレかもしれないし素かもしれない。

ジャンくん(シュシュ):ジャンくんが笑顔で見てるよ。


GM/クレナイ:「それと、もうひとつお得な情報があるでち。"うずまき農場ホイールフィールド"の見取り図……スケッチはよく売れるのでち。いい地図を書いてきてくれれば、あるていどの値段で引き取るでちよ」

オルフ:なるほど。んじゃ、ノートの一冊でも買っておくか。

シンカイ:前金の使い所ですね。

シュシュ:確かイスデスがその辺持ってたような。

アルクトス:羽根ペンとインクならあるが。あと白紙の本。

オルフ:えらい。

イスデス:流石作家殿。

シンカイ:一生ついていきます。わたくし何でもします。

シュシュ:私もなんでもします。

アルクトス:かつてペンとインクでここまで言われたことがあっただろうか。

イスデス:女の子が気軽に何でもって言っちゃダメですよ!!

GM:シュシュが言うと冗談に聞こえない。

シンカイ:すごいですね、この温度差。

オルフ:でも考えてみてください。3000円(1ガメル100円換算)の白紙の本ですよ。持ち歩いてる人いたらすげぇ! ってなりますよ。

イスデス:確かに。

シンカイ:1ページ300円。

アルクトス:地味に救命草と同額なの笑うよね。


イスデス:「ではマッピングはアルクくんに任せようか」

オルフ:「あまり夜目が効くメンバーでもない。昼間のうちに片付けられなさそうなら1度戻ってこよう」

GM/クレナイ:「チュチュン。まずは南東門の衛士に、依頼を受ける旨を伝えるのでちよ。この依頼を無事に達成できれば、お宿亭の正式な紋章エンブレムを渡すでち」そう言ってクレナイは仮の紋章エンブレムと、グランゼール周辺の地図なんかも手渡してくれる。

アルクトス:やさしい。

イスデス「準備が手厚いですね。助かります」ペコリと頭を下げて地図を受け取って熱心に見つめていよう

シュシュ:「あまり地図など見たことありませんでしたが…」世界とは広いのですね、と付け加える。

オルフ:「どうしようもなくな。……もしかしたら」

シンカイ:「オルフ?」

オルフ:「(どっかには、俺が俺のままでいられる場所が……いや、無い。だから、作る必要がある……自力で……!)……何でもない。行くか」 

GM:では、準備ができたら、初依頼出発となるぞ。

シンカイ:おー!

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