第7話『人魚伝説』(1984)

このところエンディングだけが壮絶な物語が続いてしまったので、少しずつ軟着陸をしていこうと思います。今回は幻想的なオープニングから幻想的なエンディングのループ構造が美しい三重県映画を紹介します。


『人魚伝説』


大地と海の果て三重県。

夫婦海女を営む佐伯みぎわは、一人で海上に出ていた夫を銛で殺害されてしまう。夫殺しの濡れ衣を着せられたみぎわは、女の肉体や海女技術アマテクを武器に下手人を探し出し復讐しようとする。


前半は女の情念と男の暴力が行き交う薄暗く汚れた復讐ドラマが展開されます。本当に暗い話なんですが、どれだけ堕ちても復讐を誓うみぎわの美しさが際立ちます。


そして終盤。

殺人事件が、三重県の原発開発を発端とした政治主導のものであることを突き止め、関係者への復讐実行を決意したみぎわ。銛を折って殺人に向いた形状に加工し、黒い地蔵に祈りを捧げ、いざ原発開発パーティー会場へ。それまでの伏線がひとつのとなって、視聴者を襲い始めます。


小さめの数人の首謀者に復讐をする程度の物語と思われた本作は、ここから一気にトーンのギアを数段抜かしで上げていきます。


突撃する車両、大爆発。

一直線のトンネルを抜けて警備員を刺し殺し、パーティ会場へ向かう橋の上で揉みあいながらすれ違う人間を全員刺し殺し、パーティ会場へ突入して全員刺し殺し、会場の外に戻ってきて全員刺し殺し、逃げ惑う人々を全員刺し殺し、駆け付けた警官隊を地蔵の呪力で全滅させ、女は波間の泡となって消えゆくのです。


まさに殺戮の伊勢湾台風。


台風一過した後には何も残らない、凪のような空気だけが残ります。

何を見てしまったんだ。呆然とする視聴者を美しい海中映像が癒していきます。

人魚だ、彼女は全てをはたして人魚となったんだ。とんでもない映像の説得力。


唯一無二の海女ハードアクションであるという一点で完全に推せる本作。

ハードな性描写があるのでご注意ください。そういうのは人魚伝説なので仕方がないね。



『人魚伝説 』(NETFLIXでも配信)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00FIWE0MY/ref=atv_dp_share_r_tw_463646e30f104

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