第5話『スクールズ・アウト』(2018)

世はまさに大インタネット時代。

そして未曽有の医療危機。

ウェブサーフィンの果てに「ネット de 真実」を発見してしまいバカになってした人も散見するようになりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。家族と話していますか。


この作品は、2018年のフランス作品で、それらの先駆けとして、頭が良すぎる故にバカになってしまった優等生6人組を中心に、彼らの愚かな活動を描写していく作品です。


『スクールズ・アウト』


原発が稼働しているフランス田舎町の名門中学で教師が生徒の前で身投げした。代理教師のピエールは優等生6人組が異常なほど事件に無関心なことに気がつき、彼らの動向を観察するうちに取り返しのつかない禁忌の裡に迷い込むことになるのだが……


フランス版金八先生とも言うべき社会派学園サスペンス。熱血教師のピエールが生徒たちに切り込み更生させていくのかと思ったら、逆に生徒たちの行動原理に踏み込み、一定の理解をしてしまう、というが魅力の作品です。


本作の生徒たちが憂いているのは、原発や自然破壊や止まらない戦争、単純暴力ジュテーム、食肉を得るために動物を殺すこと、性行為ジュテーム搾取ジュテーム、イデオロギー、すなわち生活の全てが他者の犠牲ジュテームに成り立っているということや、世界には自分達では救うことが出来ない不幸ジュテームがあると言うこと。


つまり、なんか「そういう一連の何か」である。彼らはに追われ、より良い人間になるため徒党を組み、内部総括ジュテームを行い、ゲバ棒を振るい、相互暴力ジュテームで痛みを知り、それを自ら撮影して小さなどん詰まりカルト共同体を生み出していく。


賢すぎる、先が見えすぎる、それ故に彼らはフリークアウトしてしまう。インタネット世代の悪い面が全部出てしまったのだ。


教師ピエールは彼らの秘蔵DVD(黒の章)を借りパクして閲覧ジュテームし、彼らの思考に一定の理解を得つつも、彼らを教師として指導。人生や世界は良くなっていくと主張していく。


作中で引用される実際の屠殺映像を交えたショック描写は背筋が凍るものとはいえ、生活には必要なものである。彼らは「し尿のゆくえ」とかそう言うものも見てバランスを取るべきだと思う。


そんな中、バスを盗んだ生徒たちの集団自殺ジュテームを食い止めたピエールは少年たちと和解する。


やがてサマーシーズン到来。

生徒たちと池のほとりで原発を眺めるピエール。


生徒たちも理解してくれた。

世の中はそんなに捨てたものじゃない。

原発の灯りは科学の力だ。


そんないい感じに終わりそうな瞬間、


いきなり原発が爆発ジュテームする。


「えっ」


「えっ」じゃないよ。こっち見んな。


なにやってんの?


フランスは世界で一番、原発の運営が下手!!

いま良い話で終わりそうになったじゃん!!

前触れなく原発を爆発ジュテームさせるんじゃないよ。


これじゃチェーホフの原発だよ。

たしかに冒頭から原発の煙突は目立っていたけどさ、そういうのはイメージ映像とか背景設定とかそういうのであるべきで、まあ実際に爆発ジュテームしてしまったことは仕方ありません。先生もそこは我慢します。


いやはや、めちゃくちゃ面白いなこれ。でも小説でやったら全問不正解で失格ですよこれ。


それはそれとして、日本国で暮らす我々にとっては、他人事ではない恐怖心とおかしみをあおる奇妙な作品であり、全体的な描写の不穏さと不穏さ、そして不穏さを匂わせる演出は恐ろしく、実在映像の連発もイヤな気分にさせてくれます。ジメッとしつつもスカッと楽しめる。オススメです。


嘘です。ちょっとキツいっす。マジで。


『スクールズ・アウト』

https://www.amazon.co.jp/dp/B086R9PJNV?tag=vod_contentsdetail-22

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