第17話 立ち上がるジョー、航空機動隊基地へ

 ――――――。


《……どうしたの? ……その人は誰? ……》


《……ママだよ》


《……すみません。今日は何もかも……》


《私はリリィです。……あなたのお名前は?》


《どうしてそこまでされるの?》


《……生まれはどこですか? ……いえ……もしかしたら……前に、会ったことがあるかもしれないと》


《あなたといると、何だか懐かしくて》


《……あなたの目は……とても優しい》


《ジョセフ。そう、ジョセフね》


《無事を祈ってるわ》




「……ジョー」

「ジョー、おい! ジョー!」

 ――はっ? 「は、俺は!」


「ジョー、大丈夫か? 気がついたか?」

「え?」

「私だ。ハイランズだ」

「……ドク? ……俺は、今…… リ、リリィは?」


 ジョーは身を起こし、辺りを見渡した。

 そして背中に手を当てる。弾丸は貫通していない。

 めり込んでいるだけで出血も僅かだ。


「大した防弾着だ」

 と、ハイランズは感心しながら弾丸を摘み出した。

「気を失うとは不覚。……ドク、航空機動隊基地まで案内してくれないか」

「ん? 何だと?」

 ジョーは立ち上がる。

「行かなくては」


 ****


 航空機動隊基地。

 レオ・フットプライドの運転するジープは真っ直ぐヘリポートへ向かっていた。


「リリィ。あのヘリに乗るぞ」

 後部座席の二人は手錠に繋がれたまま。

 震えるボビィをリリィが抱きしめる。

「……おじちゃんが、死んじゃった……」

 喘ぐ息でふさぎ込むボビィの手を、リリィは気丈に強く握った。

「ママがついてる。ママが守る」


 突如そのジープを直角に遮る一台の車が。

 フットプライドは急ブレーキを踏んだ。

 その車から降り、ズカズカと向かってきたのは――。


「レパード、貴様!」

 賞金稼ぎレパード・スキンは凄まじい形相で運転席へ。

 ジョーによって車に縄で縛られていたレパードは樵夫によって助けられ、あのキャンプ場からここに駆けつけた。


 ジープの中を覗いたレパードの目に映ったのはリリィとボビィの二人。

「署長! ど、どういうことッスか、これは?」

 フットプライドは嫌々窓を開け、彼の相手をした。

「何を喚いておる、やかましい!」

「説明してくださいよ何故ここに?」

 ニヤリと笑うフットプライド。

「お前にフラれたオルターが全部教えてくれたわ」

 チッ、あいつ! とレパードは舌打ちする。

「レパードお前こそ何故ここがわかった? 俺がここにいると」

「あんたが不在で……ヘリを借りたことくらい! 俺の情報網で直ぐにわかった! というか、おいまさか」

「ワハハご苦労だったな。……じゃあな」

「おい、人を使っておいて!」

「俺はリリィを連れ戻した。もうお前に用は無い」

 フットプライドはそう言って平然と窓を閉め、バックをし、先へ進もうとする。

 ――金など払うかお前なんぞに!



 怒り心頭のレパード。

 彼は歯を剥き出し銃を引き抜き、逃げるジープを撃った。

 ヘリポートの作業員たちは驚き、機動隊員たちが慌てて駆けつけた。

 弾丸が幌を貫く。二発、三発……。

 リリィはボビィを覆い、伏せる。

 レパードは走って追いかけ、撃ちまくった。


「あの阿呆が!」とフットプライドはブレーキを踏み、ギアをバックに入れ思いきり踏み込んだ。

「うわっ!」

 急バックしてきたジープをスレスレでレパードは躱す。

 そこでフットプライドは窓を開け、レパードの胸元を狙って拳銃の引き金を引いた。

 彼は倒れた。うつ伏せに、倒れた。



 騒然とする場内。

 フットプライドは間もなく機動隊員に囲まれた。

「ハッ、正当防衛だ! そのレパードって奴がいきなり撃ってきたんだぞ! そいつは頭がイかれてた! ……何だ? お前らジロジロ見やがって!」


 隊員の中にはスーツ姿の三人が紛れていた。

 その中の一人が大きく前に出て、言った。

「フットプライドさん、あなたを逮捕します」

「……は? な、何だと? …お前何者だ?」

 男はバッジを見せた。

「EBIのブライト・ハードレインです」

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