第16話 連邦捜査局EBI、そして到着

 首都ハイホープス。

 エルドランド連邦捜査局EBI(Eldoland-Federal Bureau of Investigation)本部ビルの最上階、ブライト・ハードレイン捜査官は遥々訪れた客人を部屋に招き入れた。



「ご苦労様です。ハイランズさん」

「真実を知りたいのは私もだよ。ハードレイン君」

「ご無事で良かった」

「ありがとう」

 

 グレイヴス国の諜報員シルヴィオ・エコーから得た 〝証拠のテープ〟を渡すハイランズ。

「早速聴いてみよう」


 ハードレインはレコーダーにテープを入れ、再生ボタンを押した。

 雑音混じりに緊迫した空気が漂う。それはグレイヴスの将校か……。


《……ヘスト……ルの……頂上……午前八……投下しろ……》


 短いやり取りだったが、確かに当人の名が上がっていた。

 ハイランズは深く息をつく。

 ――ライセンスよ。お前さんの話した通り、事実だった。何という皮肉だ……。



「念のため、後で声紋を照合します」

 そう言ってハードレインはハイランズにコーヒーを差し出した。

「奴は国家の裏切り者です。必ず捕まえますよ」


 ****


  四日目の朝。

 ついにノースフォレストに入るジョーたち。

 広がる大自然。美しい緑と雄大な山々。

 新鮮な空気と澄んだ水。

 豊かな匂いが優しく彼らを歓迎しているようだった。


 夜の出来事でボビィはますますジョーが好きなった。

 ――僕も強くなりたい。おじちゃんみたいに。

 銃声で目が覚めた二人は窓越しにジョーを見ていた。

 事無きを得、リリィは感謝で涙が溢れた。



 ジョーはビフから聞いたハイランズの住所を地図で確認する。

「ハイランズさん。居てくれたらいいがな」

 橋を渡り森を過ぎると、小さな町が広がった。

 素朴な風景と平穏な日常が懐かしかった。

 通りを抜け、小高い丘を目指した。



 やがて無事、ハイランズの家に辿り着く。

 それは実に質素な、木造の白い一戸建。

 ジョーは速度を落とし、ゆっくりと敷地に入った。

 地面には残されて間もないタイヤの跡が。


「ジープだ。もう帰っているかも」

 木彫り看板で〝ハイランズ診療所〟とある。

 その正面に車を停め、ジョーは降り二人の手を。

 ボビィは人形を手に勢いよくポーチに走っていった。

 リリィはジョーに言う。

「ジョーさんが拾い上げてくださったあの人形、ハイランズさんからボビィへの誕生日プレゼントなんです。あの子も会いたがってて」

「そうだったのか」

「先生は困った時はいつでもおいでと。……そう。本当に来てしまった」



 ボビィは玄関のチャイムを鳴らした。

 四回、五回……だが、何の反応もない。

 リリィはボビィの頭を撫で、ジョーを見た。

「やっぱりお留守かしら」

「うむ。車庫の方を、裏へ回ってみる」


 行くと、駐めてあったのは黒いジープ。

 これはドクのものだろうかと首を傾げながらジョーはその物騒なサイドボディの印字を確かめた。


 〝航空機動隊 = No.05〟


「これは?!」ジョーは振り向いた。

 ボビィが歩み寄ってくるその時、物影から伸びる銃身が。それを見てボビィは叫んだ。

「おじちゃん! 後ろっ!」

 火を噴くショットガン、轟く銃声。

 ジョーは背後から撃たれ、倒れた。


「おじちゃーーーーんっ!」

 撃った男、そこに姿を現したのは――。


 リリィは驚愕した。

「フットプライド!」震えながらリリィは必死でボビィを背に。

「ど、どうして、あなたがここに……」

 姿を現したレオ・フットプライドは含み笑いで銃を肩に、二人の前に歩み寄る。

「おいリリィ。さぞ他人行儀なご挨拶だな。何様のつもりだ?」

「ひ、人殺し! あなたは彼を、…なんて人なの?!」

「くくっ、ふ、はっはっは! はあ? 何て口の利き方だぁリリィ。お前を拐った男に裁きを下したまでだぞ!」

 したり顔が醜く歪み始めた。

「撃たねばこっちが殺られたわ! そいつは元ビリジアンベレーの……」

 硬直しているリリィの腕をフットプライドは掴んだ。

 ボビィの腕も無理矢理引き寄せる。

「おじちゃん! ジョーおじちゃん!」

 二人に手錠を掛け、ジープの後部座席に押し込むフットプライド。

 涙目でリリィはジョーを見つめた。


 フットプライドが言う。

「こんな死に損ないの幽霊みたいな男と……怖かっただろうボビィ? 今度は優しいパパとドライブだ」

 ちらりと彼は地に伏すジョーの横顔を見た。


「ん?」

 フットプライドは顎を摩りながらジープに乗り、キーを回した。

 そして後ろのリリィに訊いた。

「リリィ。あの男は……ジョセフ・ハーディング なのだろう?」

「……え?」

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