第563話 街の英雄のスキルと復興開始
【ジョブ】【名称:街の英雄】【ランク:2nd】解放条件:村の英雄Lv30、滞在している街の住民の認知度(自身の名前)が80%以上。もしくは、自身よりLv40以上高い敵を単独で倒し、街の住民の8割から感謝される。
・街を守りし英雄。彼が居れば、どんな脅威が来ても街は安心だと、住民が安堵する程である。
高いステータス補正に、光属性と雷属性のスキルを多数覚える為、同レベル帯では一線を画す強さを誇る。
しかし、まだまだ道半ば。更なる高みを目指して研鑽しよう。
・ステータスアップ:HP大↑、MP大↑、筋力値大↑、耐久値大↑、知力値大↑、精神力中↑、敏捷値中↑、器用値中↑
・初期スキル:村の英雄スキル、無我の境地、雷光閃、HP自然回復量中アップ
……この解放条件、もっと小さな街だったら楽に取得出来たんじゃね?
よりにもよって、領内で一番大きい領都で達成するとは……
そして、解放条件の後半、恐らく村の英雄を持っていない人でも、条件を達成すれば習得出来ると思う。ただ、レベル40差でソロはキツいけどな。ディゾルバードラゴンがレベル70なので、ソロでレベル30……聖剣があっても無理だろ。倒せるなら、確かに英雄だわ。
まぁ、レア種じゃなくて普通の高レベル雑魚魔物なら……少し無理があるが、シチュエーションとしてはこんな感じか?
村よりも少し大きい程度のギリギリ街と言える場所に、魔物の領域から出て来たはぐれ魔物レベル65(バウンスハルピュイアのように、初級属性が弱点の奴)が単独で襲来。それを重戦士か軽戦士レベル25が、弱点属性が付与された武器を使って死闘の末、(増援が来る前に)討伐する。(魔道士は、魔法の一撃で倒せないと詰む)
ただ、『街の住民の8割から感謝される』かは、微妙なところだ。村と違って人が多い分、裏工作して活躍したと宣伝しないと厳しいよな。
魔法戦士の儀式から解放させた王族が、無茶しないといいが。レグルス殿下には、解放条件を公開しないように進言しておこう。
【スキル】【名称:無我の境地】【パッシブ】
・敵の攻撃をギリギリで躱した際に自動発動する。一定時間、思考速度を倍にして、筋力値をアップさせる。
この時、ギリギリであればある程、効果時間が延びる。HPが減った場合は発動しない。
所謂、ゾーンに入るスキルっぽい。俺も何度か経験はあるが、戦闘中に考える時間が増えるのは非常にありがたい。戦闘訓練をしているし、パッシブスキルもあるから咄嗟に対処は可能であるが、それが最善であるかは別問題だからである。ただ、この状態に入ると、自分の動きまで遅く感じるのは慣れが要るけどな。
ん? ディゾルバードラゴンとの戦いでゾーンに入ったか、だって?
いや、あの戦いは被弾するのも前提で戦っていたので、最後の〈壁天走り〉で止めを刺す時以外はゾーンに入らなかったな。
【スキル】【名称:雷光閃】【アクティブ】
・雷の力で刀身を作り、小範囲を薙ぎ払う。雷の属性ダメージに加え、小確率で麻痺させる。
後で試し打ちをしたところ、武器に紫色の雷属性を纏わせて、前方を横一文字に薙ぎ払うスキルだった。剣閃を飛ばす、魔剣術の〈エレメント・スラスト〉と似ていると感じるかもしれないが、範囲がかなり違う。あっちは刀身サイズの剣閃なので単体用、巻き込めても2匹が精々なのだが、〈雷光閃〉は前方の横5m、奥行き5mくらいを攻撃できる範囲攻撃なのである。まぁ、範囲魔法と同じくらいMPを使うので、スキルにしてはちょっと消費が多目。スキル終了後の硬直も短く、魔法のように充填しなくて良い分バカスカ使えるけど、連打し過ぎてMPの枯渇が心配か?
そして、何より面白かったのが、武器を持っていなくても使用可能なところである。徒手空拳の状態でスキルを使うと、手刀から紫色の刀身を伸ばして薙ぎ払うのだ。不意打ちに対して咄嗟に武器を抜かずとも、そのまま反撃に移れる……まぁ、〈敵影感知〉や〈第六感の冴え〉があると、不意打ちを受ける可能性は限りなく低いけどな。
【スキル】【名称:HP自然回復量中アップ】【パッシブ】
・HPの自然回復量が中アップする。傷の治りが早くなり、出血も早めに止まる。
これも地味であるが、あるに越したことはない良スキル。ベルンヴァルトが使っている『血魂桜ノ赤揃え』だと大アップなので、それよりも効果は低いが十分だろう。まぁ、俺には保険が多いので、怪我をすることは少ないが。
街の英雄はステータス補正の高さも相まって、複合ジョブと同程度に強くなるのは確定だろう。早めにレベル40までレベリングして、他のスキルも覚えさせておきたいところだ。
初めてのサードクラス、近衛騎士も確認しておこう。騎士系のサードクラスは守護騎士であるが、ある条件を満たすと、上位互換である近衛騎士に変化するらしい。
【ジョブ】【名称:近衛騎士】【ランク:3rd】解放条件:騎士Lv50以上、騎乗突撃で魔物を50体以上倒す、上位貴族から護衛騎士に任命される。
・上位貴族に認められた特別な騎士。主君とその家族を守る時に真価を発揮する為、出来るだけ主君と同じパーティーで行動しよう。属性攻撃スキルを習得する上位の騎士であり、騎乗した状態での突撃は非常に強力。また、騎乗できない場合でも、高い耐久値と盾スキルは健在である。指揮スキルも習得する為、パーティーの要となるだろう。
※契約主君:ソフィアリーセ・ヴィントシャフト伯爵
・ステータスアップ:HP大↑、筋力値中↑、耐久値大↑、精神力小↑、敏捷値小↑、器用値中↑
・初期スキル:騎士スキル、主君忠義の盾、矛槍術の心得、騎士団の行軍
ソフィアリーセと契約した覚えはないのだが……多分、婚約式の時にやった小芝居(495話)のせいかな?
まぁ、強いジョブが手に入ったのだから、結果オーライだろう。
解放条件自体は緩め。聖騎士は100体だったので、あっちが厳しいのだろうけど。
【スキル】【名称:主君忠義の盾】【アクティブ】
・契約主君、及びその血族がパーティーに居る場合にのみ使用可能となる。筋力値と敏捷値が1段階アップ、耐久値が2段階アップし、〈カバーシールド〉の移動速度が大幅にアップする。
ただし、このスキルが発動するは1時間に一回のみ。
ケイロトスお爺様が俺との一騎打ちで使ったスキルだな。確か、青白いオーラを纏っていた覚えがある。やっぱりステータスアップ系のスキルらしいが、メインは〈カバーシールド〉の方だな。どんな状況でも駆けつける事が出来るに違いない。
クールタイムが1時間と長めである為、戦闘の度に使うのではなく、苦戦を感じたら使う感じだな。
【スキル】【名称:矛槍術の心得】【パッシブ】
・重量級の長柄武器の扱いを補正する。
ベルンヴァルトが使っているハルバードに対応した心得系スキルだな。ああいう重いのは、〈槍術の心得〉があっても重さに振り回されがちになるので、あると助かる。俺の場合はプラズマランスかな? 今のところ、直接攻撃する武器って言うより、〈プラズマブラスト〉を撃つロケットランチャーみたいな扱いだけど。
【スキル】【名称:騎士団の行軍】【パッシブ】
・騎乗時のみ自動発動。自身の周囲にある罠の発動を無効化して解除する(ダンジョン外でも適用)。騎乗している動物の耐久値をアップし、航続距離を延ばす。
また、パーティーメンバーが2名以上騎乗している場合、術者を中心とした広範囲に存在する罠を解除する。
騎士が覚えた〈強行突破〉の上位版だな。あっちは走っていないと罠を解除出来なかったけど、こっちは制約が無いようだ。広いフィールド階層であれば、馬かバイクを複数持ち込んで移動に使った方が、罠の心配をしなくていいな。
聖騎士の〈聖馬召喚〉が流行れば、活用する人はもっと増えるだろう。
最後に騎士レベル50で覚えたスキルも確認する。ステータス補正の器用値が中アップに上昇。これは近衛騎士にも引き継がれている。そして、新たにパッシブスキルを覚えていた。
【スキル】【名称:シールドマスタリー】【パッシブ】
・盾の付与スキルを有効化する。ただし、盾を2枚装備したとしても、有効化されるのは最初の1個のみである。
噂に聞いていた騎士の人気な理由だな。付与スキルは本来、武器、防具、アクセサリーの1つずつしか効果を発揮しないが、ここに盾が加わるのである。パッシブスキルでステータスを補強したり、状態異常耐性を増やしたり出来るのが良い。
まぁ、『ミラーサークルシールド』の〈ミラーシールド〉のように、付与されたアクティブスキルを使うだけなら、このスキルは必要ない。むしろ、ミラーサークルシールドには、他のパッシブスキルが付与されていないのが勿体ないくらいである。
付与の輝石は1個、祭りで確保しているけど、もうちょっと付与術師のレベルを上げて、良い付与術を覚えてから使いたい。
翌朝、いつもより遅い2の鐘(7時)に起こされて、朝食を取る。本来ならば祭りの最終日の筈であるが、昨日の今日なので勿論中止。しばらくは街の復興に取り掛かる事と指示が出ている。
先ず手始めに行ったのが、我が家の被害状況だ。皆で外に出て確認してもらったところ、白銀にゃんこのメンバーはこぞって肩を落として悲しんだ。
「うう……白銀にゃんこのお店は、わたしと近所の奥さん達の憩いの場だったのに。あの看板も気に入っていたのに、燃えちゃったか~はぁ」
「こっちの厩舎もですよ。ザックス様、昨日の蘇生の儀式では、馬は生き返らせる事は出来なかったのですか?」
「ああ、巨人型の魔物に食べられて、遺体も無かったからな」
その後、ヴァルキュリア達のパワーダイブで、レッサーキュクロプスの胴体ごと消し飛んだのだ。〈ファイナリティ・キュアレシア〉でも遺体が無くては無理である。
俺はレッサーキュクロプスの血で汚れた部分を〈ライトクリーニング〉し、火災現場にも順次掛けてゴミを消し去っていく。そんな折、白銀にゃんこ跡地(焦げた木材の山)に〈ライトクリーニング〉を掛けた後に、色々と残された物が出て来た。それは、清算に使っていた簡易金庫箱や飾ってあった金属製の小物、照明の魔道具、そして、横倒しになった大型冷蔵庫の魔道具である。
「〈ライトクリーニング〉で消えなかったって事は、まだ使えるのか? ヴァルト、起こすのを手伝ってくれ!」
「おう、こっち側持つぜ!」
起こしてみたところ、多少の傷はあるものの焦げ等は無く、ドアも普通に開閉した。どうやら、店が崩れた時に倒れただけで、下の方まで燃え移る前に消火出来たようだ。
ただし、店の電源たる魔水晶のバッテリーボックスまでの配線が、千切れてしまって動作しない。
「ああ、これくらいなら修理に出せば治せそうですね。私が錬金術師協会か商業ギルドに行って相談してきましょう。〈アイテムボックス〉!」
「頼む……ああ、店がこんな状況だから、個別の動力箱を付けてもらった方が良いかもな」
照明の魔道具も配線が切れてしまっているが、どの道、店をどうするか決まらないと意味がない。
幸いな事に、祭りで使っていた屋台はそのまま借りる事になっている。屋台と冷蔵庫を併設出来るように、個別の動力箱があった方が良いだろう。そんな方針をフォルコ君に話し、修理対応をお任せしておいた。
その他、薙ぎ倒された生垣は回収したが外から丸見えな状況は変わらない。取り敢えず、応急処置で店の行列を整理するポールを立てて、ロープを張っておいた。家の敷地だと主張するくらいは出来るだろう。
ただ、庭に空いたクレーターはどうしようもない。ダンジョンで土を採取して来て、埋めるか?
そんな、相談をしていると、レスミアがナールング商会を頼ろうと提案してくれた。
「ナールング商会はお店を建てたり、改装したりする伝手があるって聞いた覚えがあります。お庭の整備とか、白銀にゃんこの建て直しをリース姉さんに相談してみませんか?」
「うーん。一応、大家であるヴィントシャフト家の許可が要るとは思うけど、あっちは外壁の修理で大変そうだからなぁ……うん、先にリスレスさんに相談してみてくれ」
「あ、レスミアさん、店の建て直しの話なら私も一緒に行きます。一応店長ですからね」
被害状況を確認したところで、各々行動する事になった。レスミアとフォルコ君はナールング商会へ行き、俺とベルンヴァルト、フィオーレは南門の外で溶岩の撤去工事である。
「私は肉体労働じゃなくて、祝福の楽曲を弾くのが仕事だからね! 劇団の人と一緒にライブを開いて、皆を癒しちゃうよ!」
昨晩の祝勝会で劇団のライブに混じって演奏していたところ、伯爵家からの仕事に臨時団員(仮)として参加する事になったそうな。
家に残るのはメイドコンビだけあるが、早速ベアトリスちゃんはエプロンを身に着け始める。
「それじゃ、私はお昼ご飯の準備を始めますね。一緒に工事をする騎士団の方達にも振舞えるように、多めに作っていきますから……今日は寒いので、温かい料理が良いですね」
「わたしも手伝うよ~。それと、南門の方でも屋台を使えば、魔導コンロが使えるよね?
ザックス君、向こうの場所を確保しておいて~」
「了解。それじゃ、復興の手伝いに行ってくるよ」
馬車が無いので、2台のバイクを取り出し、後ろにフィオーレを乗せて出発した。
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